「経営体力」をどう付ける?
『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)で著名なクレイトン・クリステンセン博士は、イノベーティブ(革新的)な考え方をできる経営者の特質は、という点でも興味深い研究を発表している(『イノベーションのDNA』<同>)。
クリステンセンは約80名のイノベータ(過去にイノベーションを起こした実績のある経営者)と400名の非イノベータの企業幹部を調査して、前者をかたちづくった共通的な資質を抽出した。
1.関連づける力
2.質問力
3.観察力
4.ネットワーク力
5.実験力
これらの要素のうち、最後の「5.実験力」だけはオーナー経営者でなければ簡単に発動させることができない経営力の範疇だろう。しかし、1-4の要素は、経営者や幹部がこれから「経営体力」を高めようとするなら有用な指針となるものだ。
クリステンセンの4指針は、順番を代えて次のように読み下すことができる。
「外に出て(4.ネットワーク力)、じっくり観察して(3)、躊躇なく質問して(2)、頭の中で組み立てろ(1)」
本記事を目にしている読者の多くが、同じ会社に長く勤めてきているかもしれない。その場合は、同一社、同一業界の悪弊に染まっている可能性が大きい。「外に出る」とは転職したり、社外のセミナーや交流会に行ったり、その代替として本を読むことだ(クリステンセンの調査では最大の外部刺激とは海外居住であるという)。
それから、日本人が苦手なのが「3.質問力」だろう。「聞くは一時の恥」は正しい。そして質問するとインタラクティブなキャッチボールが始まり、思いがけない着想にたどり着くものである。
私は、自分が教えている経営者の皆さんによく言うことがある。
「本を読まない経営者はダメです」
今までは、うまくやってこられたかもしれない。しかし、この後さらに展開していくためには、新しい一手が必要だろう。その糧を、知恵を、今から仕込んでおこう。
2017年は、皆さん、どうか本を読んでほしい。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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