「格安スマートフォン(スマホ)」ブームの先駆けとなった日本通信が、ソフトバンク回線を利用したMVNO(仮想移動体通信事業者:自社でモバイル通信のネットワーク設備などを持たずに、大手キャリアの回線を一部買い上げてサービス提供する事業者)サービスを2017年3月に始めることを発表した。その狙いは、ソフトバンクに囲い込まれてきたiPhoneユーザーの取り込みだ。果たして携帯キャリアの勢力図に変化は起きるのだろうか。
ワイモバイルとの2ブランド体制で好調のソフトバンク
ソフトバンクが2月8日に発表した2017年3月期第3四半期決算では、国内通信事業の営業利益が前年比で約9%増加し、好調ぶりを示した。その背景には、「ソフトバンク」に加えて「ワイモバイル」(Y!mobile)というサブブランドを展開する2ブランド体制がある。
このワイモバイルは、スマホ販売台数ベースでは格安スマホ市場でシェア40%との調査もあり、絶好調とされる。プロモーションでは2016年末にブレイクした「ピコ太郎」を前面に押し出す一方、ソフトバンクブランドではピコ太郎ブームの火付け役となった歌手のジャスティン・ビーバーを起用するなど、連携も完璧だ。
今、格安スマホ市場では多くの事業者がドコモから通信の帯域を借り受け、独自のサービスを展開している。だが、その仕組みを知らない消費者からは「格安」と銘打ったサービスに不安の声も多い。
その点、ワイモバイルは料金こそ最安とはいえないが、ソフトバンクが直接手がけている安心感がある。アップルの「iPhone 5s」も取り扱い、全国展開するショップはヤフーの「Y!」のロゴを冠するなど、大手と格安の「いいとこ取り戦略」が功を奏してきたといえる。
ソフトバンクのiPhoneユーザーを狙い撃ちに
この2ブランドの間に、ソフトバンクは絶妙な「敷居」を設けている。たとえばソフトバンクのiPhoneは、そのままではワイモバイルのSIMカードで利用することはできない。また、ソフトバンクからワイモバイルに移行した場合は、他キャリアから来た場合の毎月1000円の割引がなくなってしまう。