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日産ゴーン社長、V字回復美談に隠れた黒歴史…深刻な幹部流出、徹底した「責任逃れ」

文=河村靖史/ジャーナリスト
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根強い批判も

 17年間にわたって日産のトップを務めてきたゴーン氏だが、ずっと順風満帆できたわけではない。13年には、他の自動車メーカーの業績が順調ななかで、大手のなかでは日産だけ業績が低迷、下方修正を繰り返した。しかし、ゴーン氏は当時日産でナンバー2だった志賀俊之氏をCOO(最高執行責任者)職から解任する一方で、自らは社長兼CEOの職にとどまったことから強い批判にさらされた。ゴーン氏は進退について「株主が決めること」と話していたが、日産の筆頭株主はゴーン氏がトップを務めるルノーだ。

 そして、ルノーと日産のトップに固執するゴーン氏を嫌って多くの幹部が流出した。ゴーン氏の後継者の1人と見られていた副社長のアンディ・パーマー氏は、アストン・マーチンのCEOとなった。日産の高級車ブランド・インフィニティ部門トップだったヨハン・ダ・ネイシン氏は米ゼネラルモーターズ(GM)の幹部に就任した。業績を急回復させたPSAグループでトップを務めるカルロス・タバレスCEOは、ルノーのCOOだったが、ルノーのトップ就任に色気を見せたことからゴーン氏の怒りを買い、移籍したとされている。

ゴーン氏の野望

 ここまでルノーと日産のトップに固執してきたゴーン氏が今回、あっさりと西川氏にその座を譲った理由は何なのか。

 大きな理由の一つに、現行の中期経営計画「日産パワー88」が今年3月末で終了し、17年度から新しい中期経営計画に入ることが挙げられる。日産入りした当初の「リバイバルプラン」から、ゴーン氏は一貫して中期経営計画を達成できるかを最も重視してきた。日産パワー88に掲げた売上高営業利益率8%、グローバルでの市場シェア8%は達成できない見通しだ。そこで次期中期経営計画では、「西川氏にバトンタッチする」というわけだ。ただ、日産のある役員は「西川氏が策定する中期経営計画が未達成なら、彼の首は3年で切られるのは確実」と言い切る。

 もう一つの大きな理由とみられるのが昨年、燃費不正問題を起こした三菱自をルノー・日産グループの傘下に入れたことで、世界トップの自動車メーカーグループの一角になったことがある。三菱自を加えたルノー・日産グループ全体の世界販売台数は16年が996万台となり、世界3位で販売台数1000万台のGMに肉薄、世界1位の独フォルクスワーゲン(VW)、2位のトヨタ自動車の背中が見える位置についた。

 ゴーン氏はもともと、アライアンスを世界トップクラスの自動車メーカーグループにすることを目標としてきた。それだけに、今後はアライアンスの拡大に専念する。巨大アライアンスグループを率いていくには、日産の社長兼CEOとしての業務が負担になってくる。日産を含めてアライアンスの自動車メーカーそれぞれにCEOを置き、それぞれに成長の責任を持たせる。その上でVW、トヨタ、GMを超えるアライアンスに成長させ、そのトップにゴーン氏自らが君臨しようと考えても不思議ではない。

 まずはゴーン氏が社長兼CEOを退任した後の日産の動向が、注目される。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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