集客の柱に据えたのは中国からの団体客だった。中国でツアー客を募集する旅行会社へ猛烈な売り込みをかけた。訪日ツアーの行程にラオックスに立ち寄るコースを組み込んでもらうためだ。そしてツアー客がラオックスの店舗で使用できるクーポン券を配布した。
中国からの訪日ツアーの団体客は、バスを連ねて旅行会社が組み込んだコースを回る。バスから降りた団体客がショッピングに駆け込む。かくしてラオックスは爆買いバブルの恩恵に浴した。
しかし、「団体客+爆買い」という構図が崩れた。中国で日本観光がブームになり、中国の何千という旅行会社が個人向けの訪日ツアーを企画するようになった。
そのため、ラオックスはかつてのように定番コースではなくなり、ドラッグストア、ディスカウントストア、専門店や他の免税店との集客競争が激しくなった。集客競争とは旅行会社に支払うバックマージンが多いかどうかの競争のことだ。
16年、中国を中心とした訪日客数は衰えていない。それにもかかわらずラオックスの売り上げが大きく落ち込んだのは、集客競争に敗れたことを意味する。個人客はリピーターが多いため、ショッピングより観光地などを巡るコースが中心になる。ショッピングにしても、スマートフォンで検索して安い店から買う。
コストの半分以上が集客費用
ラオックスのコストは、集客費用が大半を占める。爆買いバブルに沸いた15年の販売手数料は130億円で販売費・一般管理費の55%を占めた。16年は売り上げが落ちたため、販売手数料は81億円に減った。だが、コストが下がったと喜ぶわけにはいかない。なぜなら、集客力が落ちたことを意味するからだ。
16年は集客を高めるために販売促進費を前期比4.4倍の7億4000万円投入した。そのうち中国での広告費は、同2.1倍の2億4000万円に上った。集客するために、なりふりかまっていられなくなった様子がうかがえる。
打開策として取り組んでいるのが、新業態への転換だ。昨年、中国の不動産最大手「緑地控股集団有限公司」と共同出資して複合商業施設、千葉ポートスクエアの資産受益権を取得した。成田国際空港から帰国する中国人観光客に物販以外のグルメやエンターテインメントなど体験型サービスを提供する場所と位置付けている。しかし、16年中とされていた開業は遅れている。
成田国際空港に向かうツアー客が立ち寄るコースに組み込んでもらわなければ、この商売は成り立たない。開業できないのは、旅行会社から色よい返事をなかなかもらえていないからだという指摘もある。そうなると、ラオックスは普通の免税店に戻るしか手はなさそうである。
(文=編集部)