宇宙、「開放」へ…人類に歴史的転換の衝撃度、企業の宇宙ビジネス幕開け、経済モデルも変動
米国が先行する宇宙ビジネス
このように、法律改正以前から宇宙ビジネスを検討している動きがあるが、この分野で先行しているのはやはり米国だ。日本に決して技術がないわけではない。むしろ日本は素材から電子機器まで宇宙事業に不可欠な技術を数多く保有している。日本の製造業、特に技術を持つ中小企業にとって宇宙事業は魅力的な業界だ。
米国で先行している分野のひとつにデータ活用がある。安価な衛星を多数打ち上げて全地球の詳細画像を日々更新し、そこから得られるデータを分析して販売するというビジネスモデルだ。いわばビッグデータの宇宙版ともいえる。グーグルなどデータ活用を得意とする米国IT企業は、この分野への投資を活発化してきている。
宇宙事業そのものに誰もが参入できるわけではない。しかし、宇宙から得られるデータを自社の事業に活用したり、データを分析して販売したりするのであれば、多くの企業にチャンスがある。今はまだ十分なコストパフォーマンスが得られないかもしれないが、画像の解像度、更新頻度、価格など、この分野の進歩は想像以上に速い。今から準備していてアイデアを蓄積しておいてはどうだろうか。
たとえば…
衛星画像を活用する応用例にはどのようなものがあるだろうか。米国で使われている先進事例をいくつか見てみよう。
衛星から容易にわかるデータには様々なものがあるが、大規模スーパーやモールの駐車場に停めてある車の数もその一つだ。車の数を定点観測し続け、そのデータと店舗の業績データを関連づけることによって、来客店数や売上高の推測が可能となってくる。絶対値はともかく、業績変化についてはかなり正確に予測できるだろう。同様に、工場の外に止まっている大型トラック(部品納入と製品出荷の入りと出がある)の数を観測することで、工場の稼働率や業績予測が可能もある程度推測できる。
これらは観測データをほぼそのまま活用する例だが、数学の知識を導入するとさらに分析範囲が広がる。たとえば中学校で習う幾何学を応用すれば石油在庫量の推測が可能だ。たいていの石油タンクは貯蔵する石油の量によって屋根が上下する。したがって、石油貯蔵タンクの影の長さを衛星から撮影し、三角比の原理を使えば、簡単に石油の在庫量を推測できる。難しい数学などいらない。こうした分析に対するニーズが高いのは、中国やロシアなど公式データが不完全な地域の資源量や生産量の推測だ。
時には夜空を見上げながら、衛星データを活用したビジネスモデルを考えてみてはどうだろうか。
(文=宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営>専攻教授)
【参考文献】
1.宇宙事業、民間参入促す、日経産業新聞 2016年11月10日
2.脚光浴びる新たな業績算出法、日経ビジネス 2016年8月29日号
3.宇宙事業仕切り直し、日経産業新聞 2017年1月17日