石油転がし、魚転がし、墓石転がしなどが実行されたが、この取引の輪に昭和電工系の昭光通商、三菱鉱業セメント系の不二興産、飛島建設系の飛栄産業などの社会的に信用のある企業の子会社が加わっていた。三洋興産は、大企業の子会社や上場企業から手形を受け取り、その手形を金融機関に担保として差し入れたり、割り引いたりして資金を調達。日本レース株や日本航空株を買い集めていた。
昭光通商は13年12月期までの4年間に2億数千万円の所得隠しを指摘されたこともある。取引先への業務委託費として費用計上した2億数千万円が、実際には第三者への資金提供だったことが税務調査で判明したのだ。
昭光通商は国税局の調査に対し、実際の支出先や支払い理由を明らかにしなかったため、「使途秘匿金」と認定されて1億円を超える制裁課税を受け、修正申告をした。
問題になった業務委託費は、税務調査の結果、実体のないペーパーカンパニーへの支払いとされ、実際には資金の移動がないことが判明した。別の第三者への資金提供とみられているが、昭光通商は最後まで支出先を明らかにしなかった。
今回の60億円といわれる特定の顧客との取引についても、実態があるかどうかが焦点となるとみられている。昭和電工の監査を行うあずさ監査法人が、どのような判断を下すかに視線が集まっている。
“昭和電工のドン”と呼ばれる大橋光夫・最高顧問は『私の履歴書』で、コンプライアンスの重要性に言及していた。「昭光通商は昭和電工グループの問題児」(関係者)という厳しい見方があっただけに「またか」(同)という思いが強い。大橋氏の発言は薄っぺらいものになってしまった。
16年12月期決算を発表でき次第、基準日を設定して臨時株主総会を開く方針。同社は「配当を実施したい」としているが、02年12月期以来、14期ぶりの無配転落のイメージはかなり悪い。
執筆者に中内功氏、林原健氏、井植敏氏など
2000年以降の『私の履歴書』執筆者を見てみよう。00年1月に中内功(正しくは右側が刀)・ダイエー会長(当時、以下同)、03年6月に林原健・林原社長、同年9月には井植敏・三洋電機会長兼CEOが登場している(肩書は執筆時、以下同)。
“価格破壊王”と評された中内氏は肉親への世襲にこだわり、とうとうダイエーを潰してしまった。林原は粉飾決算で倒れ、三洋電機はパナソニックに吸収され、消滅した。