利用者への返金は支払額のたった1%
次に、てるみくらぶの倒産騒動について、旅行記事なども数多く制作してきた編集プロダクション代表は語る。
「てるみくらぶの負債額は約151億円にも上ると発表されていますが、このうちのおよそ3分の2に当たる約99億円は利用客への負債だといいます。このうち実際に利用客へ返金されるのはその1%程度になる見通し。旅行業法には利用客に代金を返金する弁済業務保証金制度がありますが、今回のてるみくらぶのケースではその額は1億2000万円ほどまでだとみられています。約99億円の利用客の内訳は9万人程度で、仮に1億2000万円を9万人で割ったとすると、1人当たり約1333円しか返金されない計算です。
同社の山田千賀子社長は会見で『詐欺を働くとか、毛頭考えておりません。お客さまに安くていい商品をと思ってやってきました』と語っていましたが、被害に遭った利用客がこの言葉を信じることなどできないでしょう」
利用客のなかには、長い間積み立ててきたお金を使って、「ようやく海外に行ける」と考えていた人も多いだろう。そんな人たちにとって、今回の騒動は詐欺以外の何物でもない。
「競合するH.I.S.が行っている『初夢フェア』などのキャンペーンもかなり格安のツアー価格になっています。ただし、同社の添乗員らも証言しているとおり、こうした格安キャンペーンは、ツアー単体でみると赤字になることも少なくありません。大手であるH.I.S.だからこそのスケールメリットで、なんとか帳尻を合わせている部分もあるし、ツアーの赤字分を“広告費”ととらえているから実現できる破格の金額です。そういった格安ツアーに参加して利用客が満足してくれれば、同社のリピーターになってくれるので、新規顧客獲得のための施策という意味合いもあります。こうしたモデルを、てるみくらぶクラスの規模の旅行会社が真似をするには、無理があったといえるのではないでしょうか」(同)
てるみくらぶの倒産は、他の旅行会社にとっても決して他人事ではないだろう。今後旅行を計画する際には、「格安」という甘言に惑わされず、安いなりの理由を利用者側がしっかりと理解する必要があるのかもしれない。
(文=編集部)