3月中旬以降の外国為替相場では、ユーロの動きが不気味だ。ユーロ圏では物価上昇に圧されて量的緩和の終了よりも前に、利上げが行われるとの見方が出ている。米国では、連邦準備理事会(FRB)が、市場予想よりも緩やかに利上げを進める考えを示した。そして、G20では米国のムニューチン財務長官が、ドル安が必要となる保護主義政策を重視する考えを押し通した。こうした動きから、ドルを売り、ユーロを買う動きが加速してきた。
また、欧州の政治動向への安心感が広がっていることも見逃せない。3月15日に実施されたオランダ下院選挙では、ルッテ首相率いる自由民主国民党が33議席を獲得し、第1党の座を確保した。一方、注目を集めた極右政党の自由党は伸び悩んだ。この結果を受けて、移民排斥や自国第一主義を訴えるポピュリズム政治への支持は高まりづらくなったとの見方が増えている。それがフランス大統領選挙の懸念後退につながっている部分もある。こうして政治先行きへの楽観が増え、ユーロの上昇がサポートされている。そうした動きが続くかどうかは、慎重に考えるべきだ。
欧州に広がるポピュリズム政治
近年、欧州各国では、自国第一、EUへの懐疑的な考えを主張するポピュリズム政治が広がってきた。ポピュリズムは大衆迎合とも呼ばれる。これと対義をなすのがエリート主義だ。一言でいえば、欧州に広がるポピュリズム政治は欧州委員会(官僚)による行政管理を抜け出し、国境管理や司法権の回復など、自国の決定権回復を目指している。
オランダの自由党、フランスの国民戦線、そして、英国のEU離脱(ブレグジット)を主導したボリス・ジョンソン元ロンドン市長(現英国外相)らは、移民や難民を受け入れてきたEUの政策が自国の雇用、福祉などを圧迫すると主張し、自国の利益を重視すべきと訴えてきた。
特に、英国のEU離脱をめぐる議論のなかで、ボリス・ジョンソンらは世論をEU離脱に向かわせることで、自国に有利な条件を欧州委員会(本部:ブリュッセル)から引き出そうと考えていた。これに対してEU残留国側は一切の譲歩をしない方針だ。英国はEUの単一市場からの完全撤退を決め、困難かつ不透明な交渉に臨まなければならない。