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カンテレ『鬼滅の刃』“回を飛び飛び”放送の裏事情…尾を引く『えみちゃんねる』打ち切り

文=編集部
カンテレ『鬼滅の刃』回を飛び飛び放送の裏事情…尾を引く『えみちゃんねる』打ち切りの画像1
関西テレビ放送公式サイトより

 人気漫画が原作のアニメーション映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は今月16日に公開され、わずか3日間で46億円を超える記録的な興行収入となった。一方、新型コロナウイルス感染症の影響で広告収入などが落ち込み、経営不振が続く地上波テレビ局はこの“ビックウェーブ”に乗ろうと躍起になっている。

カンテレでアニメ放送も、全話ではなく一部

 関西テレビ放送(カンテレ)は10月21日、昨年、関東圏の地方局や関西圏の読売テレビで放送していた同作品の連続アニメを23日から毎週金曜日午後7時のゴールデンタイムで放送することを発表した。関東圏で放送され、人気を博したアニメが、関西圏で改めて放送されることはよくある。しかし、同じ放送エリアで局を移して放送するのは極めて異例だ。しかも、「毎週金曜日午後7時」は今年7月に打ち切りになったカンテレの誇る人気長寿番組『怪傑えみちゃんねる』があった放送枠でもある。いったい何が起こっているのか。

 劇場版の前日譚にあたるアニメ『鬼滅の刃』は2019年4~9月、TOKYO MXやBS11、読売テレビで放送されていた。カンテレは12月4日、第6~14話、第22~26話の計14話を、1日2話分放送するというものだ。なぜ1話から全話放送しないのかというと、すでに系列キー局のフジテレビが土曜プレミアム枠を使用し、同アニメを部分的に放送していたからだという。フジ系列ではこの枠で今月10日に第1夜(「兄弟の絆」第1~5話)、17日の第2夜(「那田蜘蛛山編」第15~21話)を放送。カンテレはここで放送されなかった分を独自に放送するという。

上沼恵美子氏の冠番組の打ち切りと『坂上どうぶつ王国』の不振

 今回、“鬼滅”が放送される金曜夜7時は、上沼恵美子氏が司会のトークバラエティー『快傑えみちゃんねる』の枠だった。初放送から25年続いたカンテレを代表するこの人気長寿番組は、番組改編期でもない7月24日に突如終了した。突然の番組終了はさまざまな憶測を呼んだ。上沼氏は同月27日、「文春オンライン」(文藝春秋社)のインタビュー記事『「えみちゃんねる」終了 上沼恵美子が文春に告白「昨日、梶原くんからメールが」』で新型コロナ感染症の拡大が自身の降板や番組制作に影響を与えたことを激白している。

「上沼さんあっての番組ですから、ご本人がいなくなれば番組はもう作れません。問題は、後釜でした」(関西テレビ放送関係者)

 ビデオリサーチの日報によると、“えみちゃんねる”の最終回の世帯平均視聴率は15.1%(関西地区)。急遽、7月31日放送で後釜に据えられたフジ制作の『坂上どうぶつ王国』は9.7%(同)で、大幅に下落した。

「予想していたこととはいえ、局の幹部は本気で頭を抱えていました。“えみちゃんねる”はコロナ禍の影響が出始めていた今年1~3月でも14%前後を取っていました。対して、後釜の“動物王国”は良くて10%弱、平均して6%前後です。やはり、準キー局として独自制作で数字を取れる番組は貴重だったのです。

 とはいえいきなり数字が取れる番組が作れるわけはありません。そこで放映権取得で出費がかさんでも、すぐにV字回復できるように目を付けたのが今回の“鬼滅”だったようです。もはや物語全体をどう見せるのかという考えはなく、とにかく失われた数字を取り戻したいという経営幹部の思惑が透けて見える編成で、局内でも不安の声が聞かれます」(前出のカンテレ関係者)

テレビ局にとって“鬼滅”は必ずしも救世主にならない?

 これほど話題を集めているコンテンツをゴールデンタイムに放送すれば、かなりの視聴率を稼げるだろう。まさに窮余の策なのかもしれない。一方、次のような懸念の声も聞かれる。

「“えみちゃんねる”を見ていた視聴者層は50代以上だったと思われます。これが、一気に離れました。どこの局も、視聴者層の若返りは至上命題だと思いますが、50代以上は良くも悪くも今のテレビを一番見ている世代であり、『最後のテレビファン』ともいえる存在です。それを突然の打ち切りでごっそり失ってしまったのは痛いと思いますよ。

 “鬼滅”のファンは20代の女性を含む若年層がメーンです。映画版公開で話題性もあるので一時的に数字は取れるかもしれませんが、彼らが最近のテレビに対して持っているイメージが『NetflixやYouTubeを見るためのモニター』であることを忘れてはいけません。自分の好きなタイミングで全話見ることができるので、アニメファンはそうした媒体で視聴するのが主流になりつつあります。地上波は『見られたら見る』程度の位置付けです。

 一時的にテレビに誘導できたとしても、“鬼滅”の放送が終了後もカンテレのコンテンツの常連視聴者になるとは考えないほうがいいでしょうね。“えみちゃんねる”打ち切りの抜本的な解決策にはなっていないと思います」(アニメ専門誌ライター)

 今後もこの人気コンテンツを巡り、各媒体がしのぎを削る日々は続きそうだ。

(文=編集部)

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