2月、3月の2度にわたって、2016年4月~12月の決算発表を延期している東芝が11日、監査法人からの承認を得ないまま決算発表を行うという、異例の手段を取ることを決定したと報じられた。
これが何を意味するのか。公認会計士でブライトワイズコンサルティング代表の金子智朗氏はこう解説する。
「多くのメディアが『監査』と言っていますが、今回は四半期の決算なので正確には『レビュー』です。レビューというのは簡単にいえば、監査の簡略版です。しかし、レビューで承認されなければ上場廃止基準に抵触するのは同じです。レビューも監査法人からの結論が出ますが、OKかNG、そして結論不表明という3つの場合があります。結論不表明というのは採点不能ということで、これも上場廃止基準に抵触します。レビューの結論が付されないまま決算発表すれば、結論不表明というかたちになりますが、では即時に上場廃止になるかというと、最終的には東京証券取引所の判断が入ります。そこが日本的でありグレーなところですが、その段階で『上場廃止にはしない』という判断になる可能性もある。東芝はその低い確率に賭けているのかもしれませんね。いずれにせよ、前代未聞であることには違いありません」
東芝に巨大損失をもたらしたのは、米国の原子力事業子会社ウエスチングハウス(WH)。レビューに関しても、WHが大きく関わっている。
「報道では一口に監査法人といわれていますが、2社あるわけです。日本側の監査法人は、あらた監査法人。アメリカ側でWHを担当しているのは、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)。東芝に対して監査なりレビューなり最終的な意見を出すのは、あらた監査法人です。アメリカにある子会社WHのことまで監査できないので、PwCにその部分だけ委託しているという関係です。あらた監査法人は東芝の決算をOKだと言っているという一部報道もあるようで、承認していないのはPwCのほうのようです。内部統制にかかわることが、問題になっているようです」
上場廃止の可能性
決算発表が延期されている理由も、WHで内部統制の不備を示唆する内部通報があり、調査の必要が生じたことだった。
「レビューは監査の簡略版なので、原則論としては内部統制の積極的な評価まではやらなくていいことになっているのです。制度的原則論からいうと、それは踏み込みすぎだという考え方もあるわけです」