(2)甘い言葉と甘いシミュレーション
不動産投資の営業の常套句に、「節税対策になる」「年金対策になる」という2大トークがあります。
「節税対策になる」というトークでは、収支が悪い物件ほど不動産所得が赤字になるので、給与所得と不動産所得の総合課税によって給与所得で支払った税金が還付されると強調します。本来は不動産投資も投資なので、収支がプラスになる物件を購入すべきですが、「還付」という言葉に惑わされて購入してしまう方が後を絶ちません。
また、「年金対策になる」というトークでは、同じように収支が悪い物件では、購入してすぐに赤字になってしまうため、現実を直視させず、将来自分の年金の足しになるという点を強調します。それを信じ、苦しいながらもローンの返済を続ける方も枚挙に暇がありません。
アパートローンで購入すると危険!
いずれも、アパートローンなどの融資を利用せずに現金購入している場合は、すぐに生活に影響が出る可能性は低いですが、融資を使って購入した場合は、深刻な状況に陥るケースも出てきます。
また、物件説明の際に出てくるシミュレーションのなかには、家賃が下がらないまま推移するケースや修繕費が加味されていないケース、必要経費が甘く見積もられているケースなどがあり、購入した翌年からシミュレーションとまったく違う現実を描きだすことがあります。
前述したように、どんな物件でも年々収支は少しずつ悪くなっていきますから、最初から赤字スタートでは、投資が成功する可能性は低いでしょう。
今のように不動産価格がやや高い水準にある時代に不動産投資をする場合は特に、収入は下がっていくこと、および支出が増えていくことを前提として、厳しめに見て検討することが大切です。さらに、ある程度自己資金を投入し、融資は極力抑えるようにすべきです。
そして何より、一層入居者獲得競争が激しくなっていくので、将来にわたって長く入居者が入りそうな立地の物件を購入することが大切です。
(文=秋津智幸/不動産コンサルタント)