地震への備え
あらためて、「●年以内に●●エリアで地震が発生する確率は●%」という予測が、どれほど外れてきたかを考えてみると、どのエリアでも常に地震への備えをしていなければならないことがわかる。しかしながら、やはり地震の発生確率が高い地域が存在するのも事実だ。
「いつ起きるかという予測は困難ですが、南海トラフ巨大地震と首都圏直下型地震は、いつか起きるのは間違いありません。また、歴史を遡れば、『慶長3連動地震』を検証することは重要です」(同)
1596年9月1日に愛媛県などを中心に発生したとされる慶長伊予地震、その後、4日に大分県を中心に慶長豊後地震、5日に近畿地方を中心に慶長伏見地震という巨大地震が連動した史実が残っている。
「この慶長3連動地震は、熊本から千葉・茨城に伸びる『日本最大にして最長』とされる中央構造線という活断層が刺激されて起きた可能性が研究されています。今回の熊本地震も、中央構造線上で起きたことは明らかですから、警戒が必要でしょう」
極めて異例なことだが、現在でも熊本地震の余震は続いている。我々は、どのような「備え」を行えばいいのだろうか。誰でも絶対にしておくべき“最低限の準備”は、どのようなものか。
「最低限のサバイバルを考えた場合、地震が起きたときに、動けることが何よりも重要です。大地震が発生すれば、家具が倒れたり窓が割れたりして、素足では歩けません。そのため、枕もとに底が厚い靴を置いておくべきでしょう。また、夜中に停電が起きれば真の暗闇に包まれます。枕もとに懐中電灯を置いている人もいらっしゃると思いますが、実際に被災した人たちが口を揃えるのは、懐中電灯が激しい揺れで飛んでしまい、探すのに苦労したというのです。したがって、シーツの中に包むのがベストのようです」(同)
自宅や自室が倒壊し、中に閉じ込められてしまう危険性も想定すべきだ。警察や自衛隊が到着するには時間がかかる。巨大地震であればあるほど、地域の結びつきが重要だ。
「日頃から顔見知りであれば、いざという時に、『あの人の家が壊れている。助けなければ』と考えまし、逆もまた真なりです。自分も大変な時に、見ず知らずの人の家へ救出に向かう人はいないでしょう」(同)
ここまでは、自宅にいる時に地震が起きたケースを考えてきたが、2011年の東日本大震災で多くの人が体験したように、外出時に被災した場合に「どのように自宅へ帰るか」を想定しておくことも重要だ。
「政府は、『勤務中に地震が起きたら、会社近辺の避難所にとどまるように』と指示しています。しかし、実際には多くの人が自宅に帰ることを選びました。その教訓を生かすためには、一度、土日などの休みに会社から自宅へ歩いてみるべきです。それも、地震という異常事態をできるだけ想定しながら歩を進めてみましょう。途中に川があれば橋の崩落も想定すべきですし、大渋滞の発生も考慮しておく必要があります。また、埋め立て地であれば、地面が液状化して進めないかもしれません。地震が起きて、行き当たりばったりで家に帰るのは危険すぎます。家に帰れない可能性が高い場合、職場にとどまりながら家族と連絡を取る方法を考えておくなど、さらに具体的な対応策をシミュレーションできます」(同)
移動が重要なのだから、例えば自転車の準備や、パンク対策を考えておくことも必要だろう。それができたら、次に食料の確保を考えることになる。これについては多くの人が把握し、すでに備えていることだろう。3日分の水や食べ物、そして加熱のいらない缶詰などを用意しておきたい。
どんな無精者でも、必ず用意すべきものは、すぐに買っておきたい。それは、先に見たように「底の厚い靴と懐中電灯」だ。
(文=編集部)