かつて東京・銀座6丁目で栄華を極めていた松坂屋銀座店。4月20日、その跡地にオフィス兼大型商業施設の「GINZA SIX」が開業した。
商業施設スペースだけで4万7000平方メートルという銀座最大級の面積を誇り、オープン前からテレビ、雑誌、インターネットなど多くのメディアで取り上げられていただけあって、開店前には2000人以上の行列ができていたという。
そのため、急遽10分ほど早めて開店したが、あまりの混雑に人気テーマパーク顔負けの待ち時間が発生していたようで、ツイッターでは「入店120分待ち!」といったつぶやきも散見された。
地上13階・地下6階のビル内には、海外の高級ブランドや日本初進出ブランドなどを中心に241店舗が出店しており、話題のショップも多い。そのなかでもトップクラスの注目度なのが、アート分野に注力している書店「蔦屋書店」だ。
話題のGINZA SIXに陣取る「銀座 蔦屋書店」はどんな様子なのか。開業当日のリポートをお届けする。
中国人観光客だらけ?蔦屋書店はスタバ併設
筆者が訪れた午後の時間帯は比較的空いていたのか、待ち時間なく入ることができたものの、さすがの混み具合である。特に目立ったのが、中国人と思しき観光客の団体。1階には観光バスが停車できるスペースが確保されているため、おそらく中国人観光客のツアーに組み込まれていたのだろう。
もちろん日本人の来店客も多かったが、予想よりは少ない印象だ。夕方前だったため、日本人のOL層は少ないだろうと思ってはいたが、中高年女性層もさほど多くない。百貨店のメインターゲット層であるため、もっと多いと予想していたが、意外な客層であった。
6階の銀座 蔦屋書店に到着すると、ゆったりとして広々したスペースに書棚が並び、暖色系の落ち着いたライティングで、まるでカフェのような空間が広がっている。
蔦屋書店を展開しているのは、レンタル大手のTSUTAYAを擁するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)だ。蔦屋書店は、書籍や雑誌を6万冊取り揃えて「書店」を名乗りながらも、本を売ることだけを目的としておらず、ライフスタイルの総合提案をうたっている先鋭的な業態である。そして、GINZA SIXにオープンした同店は、特にアートや日本文化をテーマにしているという。
6階の大部分のスペースを蔦屋書店が占めており、30メートルほど続く本棚は圧巻。また、店内に併設されているスターバックス コーヒーの席に着き、コーヒーを味わいながら購入前の本をじっくり読むこともできる。しかも、このスタバではアルコール類も販売されており、ビールやワインを飲むことも可能だ。
日中だったため、アルコール類は控えたが、コーヒーに舌鼓を打ちながら「どれを買おうかな」といくつかの本を吟味する時間は、なかなかぜいたくなものに感じられた。
ヌードや春画が目立つ位置に、本物の日本刀も
書籍ゾーンには芸術、写真、建築、デザイン、ファッションといったアート関連の品揃えが豊富だが、最近、このようなオシャレを売りにした書店でおなじみの「大型本」コーナーも充実している。余談だが、世界中の建築と内装の写真をまとめた大型本は50万円という高価格だった。
また、白人美女をモデルにしたヌード写真集のようなものや、春画の専門書のようなものも目立つ位置にディスプレイされていて驚いたが、おそらくオシャレアートの延長線上という位置づけなのだろう。
なかでも一番目を奪われたのが、日本刀のコーナーだ。日本刀や武士に関連する書籍がまとめられているのだが、そこには「400年続く刀匠一族が手掛ける現代刀」など、本物の日本刀がディスプレイされているのである。しかも、その日本刀は実際に購入することもできるという。
――足を運んだ感想だが、本やアートが好きな人であれば半日ぐらいはすぐに時間が過ぎてしまうだろう。いい意味で“本屋らしくない本屋”であることは間違いなく、空いていれば併設されたスタバでくつろぐこともできる。しかし、実際はしばらく大混雑が続くと予想されるため、この銀座 蔦屋書店でまったりと“優雅なひととき”を過ごすことができるのは、もう少し先かもしれない。
(文=昌谷大介、増田理穂子/A4studio)