欠陥エアバッグによる大規模リコール問題を抱えるタカタの経営再建問題で、自動車メーカー間の不協和音が目立ち始めた。
タカタの再建方法をめぐって自動車メーカー、外部専門委員会、スポンサー候補のKSS(キー・セイフティー・システムズ)、そしてタカタの筆頭株主である創業家それぞれの思惑が交錯している。経営再建計画のとりまとめは、当初計画より大幅にずれ込んでいるが、依然として乗り越えなければならないハードルは高く、タカタ問題の解決への道のりは混沌としてきた。
「当社再建の枠組みについて、自動車各社とKSS社を中心に協議が進められているのは事実ですが、外部専門委員会ならびに当社はそのような(新旧分離型の再建枠組みを適用することで)合意についての報告は受けておりません。また、当社として何ら決定した事実も開示すべき事実もございません」
経営再建をめぐって新旧分離型の法的整理案が検討されているとの一部報道を受けてタカタは、事実上否定するコメントを発表した。
タカタ製の欠陥エアバッグ問題では、国内外十数社の自動車メーカーがリコール費用を負担するかたちで自主的にリコールしてきた。リコール費用は世界で1兆円を超える見通しで、自動車メーカーはその費用をタカタに求償する。
それだけではない。この問題が原因で米国内だけで11人が死亡しており、これらの訴訟リスクを抱えるほか、将来的にエアバッグのリコールが拡大するおそれもある。自動車メーカーがリコール費用をタカタに求償した時点で、タカタは債務超過に陥り、経営が立ち行かなくなるのは確実だ。このため、弁護士ら第三者で構成する外部専門委員会が中心となって、実質の大口債権者である自動車メーカーなどと経営再建策について協議してきた。
外部専門委員会がスポンサーとしてKSSを選定したまでは良かったが、再建方法をめぐって協議が難航。自動車メーカーやスポンサーのKSSは、法的整理を前提とした経営再建の枠組みを決めた。これに対してタカタの株式の6割を保有する創業家は、法的整理では再建まで時間を要して自動車メーカーへエアバッグやシートベルトなどの部品供給に支障が及ぶとして、裁判所が関与しない私的整理を主張。しかし、大手自動車メーカーは、手続きが不透明な私的整理によって債権放棄した場合は「株主への説明責任を果たせない」としており、折り合いがつかない状態だ。