先日、同世代のコンサルタントが何人かで集まった。皆、それぞれ成功して地位のあるレジェンドばかりだ。高価な食事に舌鼓をうちつつ、経営談義に花が咲く。
とはいえそれなりに50代以上の“オジサン”の集まりだ。途中からは体の衰え、不健康自慢が始まり、ついにはきわどい話題に突入する。
「コンサルタントとしては、オレたちは時代遅れになったよな」
「うーん、鈴木貴博さんもいよいよ時代遅れか」と真に受けないで話を聞いてほしいのだが、要はレジェンド世代のコンサルタントにとって、昔の常識が通用しない時代が来たということだ。そのときの具体的な話題を紹介しよう。
ヤフオクと共存
なぜフリマアプリのメルカリが成長したのかは、われわれコンサルタントの古典的な知識では説明がつかない。メルカリは現在急成長中で、昨年11月公表の決算では売上高122億円、純利益30億円。収益は出品料の10%にあたる手数料であることを考えると、年間の流通総額は1200億円を超え(メルカリもHP上で月間流通額は100億円以上としているので、ほぼ正しいはず)、取扱高としてはZOZOTOWNに迫る規模に成長していることになる。
さて、古い経営常識では規模の優位には絶対的なものがある。特にメルカリのように売り手と買い手が集まるマーケットのビジネスモデルでは、「外部経済性」といって、参加者数の規模が加速度的にサービスの価値を高める。数百人しか参加しないフリーマーケット(フリマ)よりも、数百万人が参加するそれのほうが、買いたいものも見つけやすいし、売る相手もすぐに見つけられる。だから、その差が持つ意味は大きい。
もともと日本にはヤフオクという巨大なフリーマーケットがある。そして古い常識ではメルカリのような新参者が参入してある程度大きくなったら、ヤフオクのようなガリバー企業のサービスが同じものを始めることで瞬殺することができるとされていた。
ところが、メルカリはヤフオクと共存しながら成長している。ヤフオクがフリマモードというメルカリを意識したサービスを始めても、メルカリの地位がゆらぐ感じがしない。
従来の経営理論の常識では、メルカリに対抗してヤフオクがフリマを始めることを「同質化」と呼ぶ。これは規模の大きい企業の最大の武器だとされてきた。昭和の時代にソニーが画期的な新製品を出したら、すぐにパナソニックから同じような商品が出る。この戦略が以前は非常に有効だった。