何が違うのか?
では、メルカリは具体的にヤフオクとどう違うのか。
まず、メルカリはスマホアプリである。ヤフオクにだってスマホアプリがあるとか言っていては時代遅れのレガシーコンサルタント扱いされてしまうらしい。メルカリはスマホからスタートしているので、ヤフオクとは徳川家光と徳川家康ぐらいに視点が違うのだ。
スマホアプリから始まったメルカリでは、身の回りの商品をすぐに売りたい女性が顧客である。そしてメルカリの商品の足は早い。検索するとたいがいいい商品は「SOLD」になっているのだ。なにしろ売れる商品は出品から5分から数十分の間に売れてしまう。なぜなら、検索条件を保存している買い手のユーザーのスマホに、プッシュ通知がいくからだ。だから利用者も一日に何回もメルカリを覗く。利用モデルがヤフオクと全然違うことがわかる。
しかも、女性ならではの顧客ニーズに対する配慮も充実している。たとえば、「売りたくない人には売りたくない」というニーズだ。まだ数回しか使用していないエルメスの高級下着を1万5000円で売りたい場合でも、買ってほしい相手は当然同世代の女性。おじさんには売りたくないというニーズがある。
これはメルカリというよりも、その前に流行したフリルのやり方を引きずった独自ルールであるが、メルカリには「コメ無し購入不可」という出品者が結構いる。そのような出品者の場合、まずコメント欄に「購入していいですか」とひとことコメントを入れることがマナーとされている。
評価の悪い人に売りたくないとか、ヤフオクにも出品しているので同時に売れたら困るといった理由もあるのだが、ヤフオクのように誰が自分のものを買って使うかわからないというのは、女性としては結構気持ち悪いという声は少なくなかった。それに応えたことも、成功要因としては大きいだろう。
メルカリの場合はヤフオクと違い、デフォルトで相手に個人情報を知られないまま、取引を完了することができる。これはターゲットユーザーである女性におおいに刺さったサービスのようだ。
ほかにも「とにかく出品が簡単だ」「送料の設定を簡単にしたい」などのニーズに対して、メルカリにはヤフオクにはない「かゆいところに手が届くサービス」が設計されている。
正確にいうと、ヤフオクにも近いサービスはあるが、メルカリのほうがずっとシンプルだ。そしてここが重要なのだが、シンプルなサービスはスマホ向きで、複雑なサービスはパソコンに向いている。つまり、やっぱりメルカリはヤフオクとは違う市場を対象にした違うサービスだから競争に生き残れたのである。
そしてコンサルの教訓としては、市場の捉え方が以前とは変わってきているということに気づくことができないと、レガシーの世界で時代遅れになってしまうということだ。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)