ヤフオクは我が国最大のネットオークションサービスで、2000年頃に競合のビッダーズやイーベイを駆逐して以降、難攻不落の最強のサービスのはずだった。
そもそも当時からヤフオクにはフリマの要素が入っていた。すぐに売りたい人は、最初から即決価格を入札価格と同じにしておけばいい。そして、すぐに買いたい人は最初から即決価格で買えばいい。
だから、ヤフオクはもう20年近く、日本最大のフリーマーケットサイトであり続けたわけであり、新参者のメルカリがそこに割り込む余地などないというのが古い経営理論だったのだ。
ニッチ
いや、あえて古い経営理論でいえば、「メルカリはフリマというニッチを見つけて、そこで成長した」という言い方はできる。
たとえば、キリンビールやアサヒビールがいくら強くても、市場の一部には「ドイツで本物とされる材料だけでつくったビールを飲みたい」というニッチな消費者が存在している。そのユーザーに向けた「エビス」(サッポロビール)や「プレミアムモルツ」(サントリー)というニッチ商品は、一定の大きさに成長することができる。
ヤフオクの流通額が約9000億円弱に対して、フリマに特化したメルカリが1200億円というのは、いかにもニッチ企業の成功例にみえないこともないのだが、「でもニッチで成功する企業は、大手がやっていないニッチを見つけるところが新しいわけでしょ?」と反論されると、ヤフオクもフリマをやっていたので、メルカリの成功は説明がつかない。
違う世界で戦っている
では、ヤフオクそっくりのサービスだったにもかかわらず、なぜメルカリはここまで成長できたのか。
一番しっくりくる説明は、「メルカリはヤフオクと似ているように見えるが、実はまったく違う市場の、違うサービスだった」という説明だ。冒頭のコンサル仲間の議論によれば、この見方ができないコンサルタントは、新しい競争原理についていけない時代遅れという扱いになるらしい。
市場が違い、ニーズが違い、顧客が違い、バリュープロポジション(ウリとなるサービスの特徴)が違えば、これはまったく違った世界での競争になる。
パナソニックがいくら家電で強くても、iPhoneは家電ではないしパナソニックとは戦っていない。マクドナルドがいくらファストフードで強くても、魚民や笑笑はマクドナルドとは戦っていない。読売新聞は強いが、「週刊少年ジャンプ」は読売新聞とは戦っていない。
それと同じくらいメルカリはヤフオクと違う世界で戦っているからこそ、あそこまで成長できたとみるべきなのだと、「自分はレガシーではない」と主張するコンサルは力説するのだ。