やる気のある社員集団が企業にもたらすもの
ギャラップは3つのカテゴリーに分けた社員たちが、会社に対する貢献で差を生んでいる、ともしている。経営の常識からすれば当然の結論である。同社は、次の9つの項目に対し、「仕事にやる気がある会社員」「仕事への意欲が低い会社員」で、何が違うのかを調査した。
・顧客評価(customer ratings)
・利益性(profitability)
・生産性(productivity)
・離職率(turnover)
・安全に関する事故(safety incidents)
・減損(盗品)(shrinkage<theft>)
・欠勤(absenteeism)
・医療安全に関する事故(patient safety incidents)
・製品・サービスの質(quality)
そして、調査で得られた「やる気度係数」によって、上位4分の1(やる気の高い会社員)と下位4分の1(やる気の低い会社員)を比較した際の、各9項目における差というものを報告している。
それによると、9項目で明らかに優劣の差がみられるとされた。たとえばやる気の高い会社員は、やる気の低い会社員と比較したときに、顧客評価を約10%、利益性を22%、生産性を21%引き上げ、離職率、欠勤、安全に関する事故の減少、不良品といった項目に関しても大きく差が出たというのである。
ギャラップのこの論理によれば、企業業績を上昇させるひとつの目安としては、彼らの調査に現れる「やる気度」を上げればいい、ということにもなるだろう。しかし、経営者としての私の経験からいうと、実は社員全体の「やる気度」を上げるのは建前としてはいいが、必ずしも「効率」の向上につながるとはいえない。
前出日経新聞記事では、3分類のうち「仕事意欲のない会社員」は「単にやる気がないだけでなく、積極的に(1)のやる気ある同僚の足を引っ張る」と解説された。経営者としては、こんな社員たちを改心させ立ち直らせるのは「百年河清を俟つ」が如しのようなもので、できればお引き取り願いたいし、そうでなくてもそんなグループにかかわり合っていてはいけないというのが私の信条だった。
実践的な経営者やリーダーの心得としては、「通信簿で5の付く社員を探せ」というものだ。正規分布で5点法の通信簿というと、全従業員のなかで「5」が付く社員の割合は7%となる。ちょうどギャラップ調査で「やる気のある社員」の日本における割合に一致する。
組織の相対的な効率を上げるには、「やる気のある社員」を認知し、権限を委譲して早めに昇進させる、という方法に特化することなのだ。
やる気度を高める5つの方法
ギャラップはもちろん「やる気度」を高める施策を提言もしている。一応紹介しておくと、次の5点だそうだ(「The Worldwide Employee Engagement Crisis, A.Mann & J. Harter, GALLUP, January 7,2016」より)。
1.「やる気」対策を会社の人事戦略に組み込む。
2.「やる気」を科学的に評価できる方法で測定する。
3.会社が現在どこにいて、将来どこに向かおうかということを理解する。
4.「やる気」をひとつの構成概念として見る。
5.「やる気」をほかの業務優先と整合させる。
ちなみに4.は説明文も読んだがわかりにくく、執筆者本人がよくわかっていないことを書き連ねた可能性もあるが、何を列挙しても「施策」らしくはなるのだろう。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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