消費者の間では魅力度が浸透していない茨城県だが、ロケ地としての人気は抜群だ。数年前にエンタメ系雑誌がロケ地人気ランキングを発表したが、茨城県はフィルムコミッションの撮影件数で沖縄県、滋賀県、山梨県などを大きく引き離して断トツだった。
いばらきフィルムコミッション設立以来のロケ誘致、支援件数が5000件を突破したという事実から見ても、茨城県の人気ぶりは群を抜く。映像制作者らの間で茨城県は、なぜこうも支持されているのだろうか。茨城出身のテレビ局関係者は、次のように分析する。
「まずは、なんといっても東京からの近さが挙げられます。映像制作会社の多い東京都心から自動車で1時間ちょっとで行けます。それでいて海、山、川、滝、田園など豊かな自然があり、古民家や寺社など伝統建築物も多く、時代劇や歴史モノの撮影には最適です。一方で、つくば市のJAXAや、つくばエクスプレス、茨城空港など、現代モノや近未来モノのロケ地としても向いています。ロケ地としての幅の広さがあり、制作サイドからすれば、とても便利なのです。つくばみらい市には1万2000坪という広大な敷地のワープステーション江戸というセットまであります」
ロケ地としての魅力がふんだんにあるということだ。
県内30自治体と連携する「いばらきフィルムコミッション」の役割
茨城県のロケ地人気を探るうえで忘れてはならないのが、いばらきフィルムコミッションの存在だ。茨城県の魅力をPRし、地域のイメージアップと観光客誘致拡大を目的に、撮影に関するさまざまな支援をワンストップサービスで行う組織で、02年に設立された。当初は「ロケハン、枕、あごといった撮影の専門用語さえわからず右往左往した」(コミッション関係者)という。その後、県内市町村と協力して茨城県フィルムコミッション等協議会を設立し、全県的な撮影支援態勢を整えてきた。
「県内44市町村のうち約30の自治体が協議会に加わり、どんな要請にも応えられるような態勢を整えました。この点は全国でも茨城県だけだと思います」(前出関係者)
県を挙げてのロケ誘致、支援態勢を整備しイメージアップに努めているのだ。その効果はどれほど表れているのだろうか。
「02年から15年までに映画、ドラマ、CMなど4848作品のロケが行われ、累計撮影日数は1万3538日となりました。この間の宿泊代や弁当代、ロケセットの建設費など直接的な経済効果は45億5000万円に達しました。最近は、JR東日本が企画したロケ地をめぐる観光バスツアーも人気になっています」(同)
いばらきフィルムコミッションのホームページには550カ所ものロケ地情報が網羅され、2500枚以上の写真で施設や建物の内部まで見ることができるようになっている。
(文=山田稔/ジャーナリスト)