「私的整理を目指していたが、足元の状況は厳しく、もう待てない状況に追い込まれた」(タカタ・高田重久会長兼社長)
欠陥エアバッグ問題で経営危機となっていたタカタは、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請、6月28日に民事再生手続きの開始が決定された。タカタ創業家の大株主、タカタに巨額債権を持つ自動車メーカーと金融機関など、各社各様の思惑が入り乱れて経営再建策の策定は混迷。しかし、最後は「兵糧攻め」で創業家が白旗を揚げることになった。勝者は、「超割安」でタカタの自動車部品事業を買収できることになった中国企業か――。
タカタ製エアバッグの異常破裂により金属片が飛散して乗員が死傷する事故が、米国で相次いで発生したのが2014年。一部工場で製造工程に問題があり、自動車メーカー各社がリコールしたものの、他の工場で製造したエアバッグ部品でも異常破裂が発生したことからタカタ製エアバッグのリコールは拡大していった。米国で「危険なエアバッグ」として批判が高まったこともあり、自動車メーカー各社は原因不明のまま、搭載した車のリコールを自主的に実施。リコールの規模は、グローバルで約1億個、費用総額は1兆3000億円にもなった。
自動車メーカー各社は自主的にリコールしてきたが、原因を特定してから、タカタにリコール費用の一部を求償する。タカタの負担がどれだけになるのかは自動車メーカーとの交渉で決まるが、これによって債務超過に陥るのは確実視されていた。
このため、タカタは弁護士などで構成する外部専門委員会を16年2月に設置し、タカタの経営再建策を検討してきた。当初、16年末までに策定する予定だったが、関係者の主張が対立し、遅れに遅れた。ホンダやトヨタ自動車など日系自動車メーカーには、「部品の安定調達」を求める声が強かった。シートベルト、エアバッグでそれぞれ世界シェア2割を占めるタカタが倒産すると、部品調達に支障が出て自社の自動車生産に大きな影響が及ぶためだ。
しかし、海外の自動車メーカーの一部では「大株主で、関係の深いホンダがタカタを救済すべき」との意見も根強くあった。日本初のエアバッグ搭載車がホンダの「レジェンド」だったことでもわかる通り、ホンダとタカタは二人三脚で安全部品の開発を進めてきた。しかし、欠陥エアバッグ問題がクローズアップされるとともに、ホンダはタカタとの距離を置き始め、エアバッグの調達でもタカタを外すケースが目立つようになってきた。