強い毒性を持つ南米原産のヒアリが神戸、大阪、名古屋から始まり、とうとう東京湾の大井埠頭でも見つかった。国は「繁殖、定着を示す証拠はない」(菅義偉官房長官)と説明し、ヒアリ・パニックにならないよう沈静化に努めている。だが、過去にも南米原産のアルゼンチンアリが日本に侵入して定着していることを忘れてはいけない。
そんな騒動のなか、なんでも株価材料にする兜町が、ヒアリの来襲に飛びついた。
狙いうちにしたのは、アリ専用の殺虫剤を手掛けるフマキラー株だ。フマキラーの株価は7月7日、一時、前日比17.2%高の1289円まで買われ、1987年3月につけた上場来高値1280円を30年ぶりに更新した。週明けの7月10日には一時、1370円まで上伸し、高値追いとなった。フマキラーはヒアリ関連銘柄の本命と位置づけられており、短期資金が集中している。
国内で最初にヒアリが見つかったのは5月26日で、中国広東省広州市から神戸港に貨物船で運ばれたコンテナの中にいた。その後、6月27日には名古屋港でも見つかり、29日には大阪市南港で女王アリが確認された。そして7月6日、東京港大井埠頭でも100匹超が発見された。
大阪南港で大量の卵を産む女王アリの死がいが見つかった際には、大きな衝撃が広がった。すでに繁殖の可能性が高まったことにより、株式市場では殺虫剤メーカーなどヒアリ関連銘柄が注目されたわけだ。
フマキラー、3カ月で2倍弱に爆騰
そこで、ヒアリ関連で絶対本命視されているフマキラーの株価を見ておきたい。
年初来安値は4月13日の704円で、7月10日の1370円は2倍弱という爆騰ぶりだ。フマキラーは、5月下旬から6月中旬にかけて、兵庫県内でヒアリが国内で初めて確認された際、環境省と神戸市に「アルゼチンアリ 巣ごと退治液剤(1.8リットル)」「カダン アリ全滅シャワー液(2リットル)」などのアリ用殺虫剤を無償で提供。駆除作業にいち早く協力した。
今回のヒアリだけでなく、2011年に東京・大田区で確認された特定外来生物アルゼンチンアリの駆除作業時も、環境省や独立行政法人国立環境研究所と提携し、防除手法の開発に協力してきた。
国内の殺虫剤市場は1位が大塚製薬グループのアース製薬、2位が蚊取り線香・キンチョウの大日本除虫菊(非上場)。