グーグルやフェイスブックを真似して失敗?
このようなトレンドを踏まえて、最近では新興のベンチャー企業を中心に、斬新で派手なオフィスが増えている。社内にカフェスペースは当たり前、ビリヤードやDJブース、さらにはバーカウンターまで完備したオフィスも登場しているのだ。デスクがなく、ソファやベンチが置いてあるだけといった「いったい、どこで仕事をしているのか」と疑問を抱くようなオフィスもある。
「トレンド志向のIT企業のオフィスでは、話題性を先行させるあまり、オフィスデザインが単なるファッションになっていることが多々あります」(同)
こうした企業が憧れがちなのが、グーグルやフェイスブックなど海外企業の先進的なオフィスだ。
「初期のグーグルは、社員全員でのスキー旅行が毎年の恒例行事として行われていたそうです。これは、社内のモチベーションの維持やコミュニケーションの場になっており、グーグルにとって非常に重要なイベントでした。
こうした背景があるからこそ、ゲレンデをモチーフにした執務スペースやスキーリフト型の会議室などが特別な意味を持ち、グーグル独自のユニークなオフィスが生まれたのです。それを、ただ『見た目がおもしろい』という理由で真似をしても、社員に響くオフィスにはなりません」(同)
「オシャレだ」というだけでオフィスを“猿真似”しても、それぞれの企業が持つ個性や業績が上がるワークスタイルのあり方を見失ってしまうことになる。 実際に、そんな“トンデモオフィス”で働くワーカーからは「働きにくい」という意見も多い。
「みんな仕事が忙しいので、カフェスペースの管理・運営にまで手が回るはずもなく、結局放置されている」「奇抜なオブジェは掃除しにくく、いつもホコリがたまっている」「フリーアドレスのおかげで、働く人と働かない人の差が開く一方」など、見た目やシステムだけを追求した結果、仕事の効率が下がっているというケースも少なくない。
オフィス環境の改善こそが「働き方改革」のカギと成り得るはずだが、理念も信念もない日本のオフィスには、まだまだ課題が多いのかもしれない。
(文=森江利子/清談社)