現代アート(コンテンポラリーアート)は美しい自然と相性がいい。とはいえ、金儲けと相性がいいとは思えない。北アルプス国際芸術祭をみてきて改めて感じた。
越後妻有や瀬戸内の芸術祭を立ち上げたアートディレクターの北川フラム氏が今年、長野県でディレクションしたのが北アルプス国際芸術祭(大町市、7月30日まで)だ。
越後妻有、瀬戸内、北アルプスと、どこの芸術祭も豊かで美しい自然がある。世界でもっとも美しい美術館といわれるデンマークのルイジアナ現代美術館でも、青い海を背景にしたヘンリー・ムーアの彫刻は感動的だった。なかでも、北アルプスの自然の美しさは別格であったので、なおさら現代アートと美しい自然は相性がいいとしみじみ感じる。
そもそも現代アートは、その基本コンセプトからして自然と相性がいい。印象派以後のモダンアートへの反発から、現代アート(コンテンポラリーアート)は生まれた。
その反発のひとつが、モダンアートが置かれる美術館の白い壁で囲まれた四角い部屋=ホワイトキューブから脱出することだった。人工的で中立的な空間で鑑賞するのではなく、野外(ランドアート)や街の中でアートを追及していく。
その行きつく先のひとつが、豊かな多様性と美しさをもった地方の自然の中に、その自然に適合し、あるいは対峙するアートをたくさん展示する芸術祭である。鑑賞者は便利に行けて人も多い美術館ではなく、かなりの時間と費用を払って、普段はあまり人が来ない地方にわざわざ行って鑑賞する。だから、短期間に1カ所に多くの作品を集めるという芸術祭の方法が合う。
現代アートの村上春樹化
最近の芸術祭には、ファインアート(純粋芸術)の愛好家ではなくて、子供も含めアートの歴史も背景も知らない一般の人がたくさん集まって来て、「おもしろい」と言って満足してみていく。子供が作品に触れ、周囲を走り回って遊ぶのを想定した作品すらある。