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白川日銀の失敗
筆者としては、この岩田氏の前提はまともであり、その後の物価上昇率の推移を説明できると考える。しかし、岩田氏は06年3月の量的緩和解除、7月の利上げにも反対すべきだった。というのは、岩田氏が根拠とした潜在成長率1.7%は、中期的には大きく変化するものではなく、07年になって初めて出てきたものではないはずだからだ。そしてこの前提は、06年の量的緩和解除以降の物価の動きを説明できる内容になっている。
さらに重大だったのは、その後の白川方明日銀総裁は岩田氏の意見を取り入れることはできなかったことだ。そして、潜在GDPの天井が低いという日銀の前提は、リーマンショック後に他の先進国で採用された巨額の量的緩和を、日銀がやらなかった原因になっている。
白川総裁時代のデフレ志向の審議委員は、安倍政権になってすべて入れ替わった。ただし、今でも事務方の資料では潜在GDPの低い天井という前提を引きずっている。具体的には、日銀のいう構造失業率である。これは「下限の失業率」を意味するが、理論的には潜在GDPと表裏一体のものだ。日銀は公式には構造失業率を3%台半ばとしているが、これは潜在GDPを低く見積もっているのと同義である。
もっとも日銀金融政策決定会合の審議委員は、日銀事務方があまりに低い構造失業率を採用していることを承知している。このため、06年と07年のような白川日銀のような性急な金融引き締めは行わないはずだ。ましてや、ゼロ金利解除については、失業率が十分に低下してから行うはずだ。
この意味で、白川日銀のOB評論家がいくら出口論を主張しても、今の日銀はそうしないだろう。なぜなら、白川日銀の失敗を、今の日銀幹部はよく理解しているからだ。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)
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