猛毒を持つ南米原産の「ヒアリ」に刺された人が出た。環境省と福岡市は7月27日、同市内でコンテナから荷物を運び出していた30代の男性作業員が、ヒアリに刺されたと発表した。病院で手当てを受け軽傷という。国内でヒアリに刺されたことが確認されたのは初めて。
日本では5月26日、兵庫県尼崎市で初めてヒアリが発見された。その後も名古屋や大阪、東京、横浜など大きな港湾で報告が相次いだ。8月にも岡山県や埼玉県など内陸部で報告され、ヒアリが確認されたのは計9都府県に上る。
インパクトが大きかったのは、7月4日に大阪市南港で女王アリと見られる個体を含むヒアリ50匹を確認したと環境省が発表したことだ。女王アリが見つかったことで、すでに繁殖している可能性が高まり、株式市場ではヒアリ銘柄騒動が勃発した。
殺虫剤大手フマキラーの株は7月10日、一時、1370円にまで上昇し、上場来高値を更新した。年初来安値の704円(4月13日)から1.9倍の高騰だ。
フマキラーがヒアリ関連の代表銘柄になったのは、「外来種アリの駆除はフマキラー」という評価が定まっていたからである。
フマキラーは、兵庫県内においてヒアリが国内で初めて確認された際、環境省と神戸市に「アルゼチンアリ 巣ごと退治液剤(1.8リットル)」「カダン アリ全滅シャワー液(2リットル)」などのアリ用殺虫剤を無償で提供し、駆除作業にいち早く協力した。
2011年に東京・大田区で確認された特定外来生物アルゼンチンアリの駆除作業時も、環境省や独立行政法人国立環境研究所と提携し、フマキラーは防除手法の開発に協力してきた。
ヒアリ、アカカミアリ、アルゼンチンアリ、コカミアリなど有害な特定外来生物に指定されているアリについては、フマキラーが実績においても先行している。
海外が業績を牽引
フマキラーの17年4~6月期の連結決算の売上高は前年同期比4%増の145億円、営業利益は14%減の17億円、純利益は9%減の11億円だった。
主力の虫よけ剤「スキンベープ」シリーズで、素肌にやさしい子供向けの新製品が伸びた。園芸用品事業も除草剤が好調で増収となった。半面、夏の需要期に向けてテレビCMなどを増やした広告費が重荷になり、減益となった。
ヒアリ騒動を受けてフマキラー株は急上昇したが、ヒアリによる業績への影響は軽微だ。ヒアリには、既存のアリ用殺虫剤でも効果があるという。
18年3月期通期の業績予想は、売上高が前期比9%増の460億円、純利益は7%増の14億円と5期連続の増収・増益を見込む。業績を牽引するのは海外だ。12年に買収したインドネシアの子会社フマキラーアジアが2ケタ成長を遂げた。
創業家の三代目である大下一明社長は、6月6日付日本経済新聞の「ニュース一言」のコーナーで、こう語っている。
「インドネシアで殺虫剤の販売を拡大する。現地子会社2社の合計でシェアは30%に達し、主力の蚊取り線香で45%のシェアで首位に立つ。今後は50%を目指す」
17年3月期の海外売上高は198億円、セグメント営業利益は13億円。海外の全売り上げに占める割合は44%、営業利益が62%に上る。さらに今後、海外事業の強化を加速する。
2株を1株に株式併合
フマキラーは10月1日を効力発生日として普通株式2株につき1株の割合で株式併合を実施する。東京証券取引所などの全国証券取引所は「売買単位の集約に向けた行動計画」を公表し、すべての国内上場会社の普通株式の売買単位を100株に集約することを目指している。
これを受けて、フマキラーは株式の売買単位である単元株式数を現在の1000株を100株に変更する。併せて、証券取引所が望ましいとしている投資単位(5万円以上50万円未満)の水準にするため、株式併合を実施する。
株式併合に伴い、年配当を従来予想計画の12円から24円(前期は11円)に修正した。実質配当に変更はない。
(文=編集部)