家電エコポイン制度と地デジ化の需要の先食いの反動で、家電量販店業界は新たな戦国時代に突入した。業界の淘汰が加速すると読んだヤマダの山田昇会長は、シェアを拡大する絶好のチャンスと大量出店を推し進めた。前期(13年3月期)の期初の時点では、営業利益は925億円(前期比4%増)と増益を見込んでいた。ところが、家電不況が予想以上に深刻なため、12年11月時点で営業利益見通しを573億円へと下方修正。さらに今回、330億円に大幅に減額。期初の見通しからみると、3分の1に大きく下振れした。
シェア拡大を狙ったベスト電器の買収も読みを誤った。ベストの13年2月期通期の連結売上高は、とうとう2000億円を割り込み、1912億円(前期比27%減)に落ち込んだ。営業利益の段階から赤字となり、当期損益は173億円の赤字(前期は6億円の黒字)。買収効果が出ないばかりか、財務面でも足を引っ張る結果となった。
ヤマダは中国事業の読みも誤った。沖縄県・尖閣諸島問題による日中関係の悪化を引き金に日本製品の買い控えが起った影響から、12年3月にオープンしたばかりの中国・南京の大型店を5月末に閉鎖する。瀋陽店、天津店については営業を続けるが、サプライチェーンの構築が思うように進まないことから、積極的に出店する方針だった中国市場は、抜本的な見直しを迫られる。今後、東南アジアに軸足を移す。
10年2月期に売上高が2兆円を突破し、次のステップとして3兆円の目標を掲げたが、その後は縮小の一途を辿る。ベスト買収を発表したときには、売上2兆円回復といわれたが、ふたを開けてみればベストと合算しても2兆円に手が届かない。ことごく読みが外れている。それでもヤマダの減益幅は同業他社に比較すれば、よく踏みとどまっているほうだ。2番手以下の家電量販店は総崩れの状態だからだ。
12年、ビックがコジマを、ヤマダがベストを買収したとき、家電量販店業界は、ヤマダ、エディオン、ケーズホールディングス、ビック、ヨドバシカメラの5大グループに集約された後に、大手同士の事業統合という再編シナリオが語られた。
ところが、ここへ来て、大手同士の再編観測は影を潜めた。業績が悪化しているためだ。合併効果が出ないことがわかってきただけではない。家電量販店の敵が、同業他社ではなくなった。米アマゾンに代表されるインターネット通販が最大の脅威となってきた。
ネット通販の脅威は2つある。1つは量販店がショーウインドー化することだ。消費者は店頭に行き、実物の商品を実際に触って確かめるが、その店舗では買わない。その場でスマホ(スマートフォン)を活用して、同じ商品を一番安く売っている通販サイトから購入する。若い女性は百貨店でファッション衣料の品定めをして安い専門店で購入する消費行動をとるが、家電にも、これが及んできた。
2つ目は価格だ。ネット通販のほうが家電量販店より安く購入できるようになった。これは家電量販店にとっては死活問題だ。ネット通販の価格に対抗するためには仕入れコストを引き下げるしかない。異業種と提携するか、自前のネット部門を強化するためにネット通販会社を買収するという選択肢が考えられる。