2017年4~6月期の米国主要企業の決算発表がほぼ一巡した。米国株式市場の価格水準やその推移を示すS&P500株価指数ベースでは、前年同期比で12%の増益が達成された。全体としては、良好な決算であったことが伺える。
今回の決算で最も注目されるのは、百貨店など小売業から先行きへの不安が示されたことだ。なかには、かなり悲観的な見方や、今後の経営の立て直しが容易ではないとの認識を示す経営者もいた。
この背景にあるのが、世界最強のネットワーク企業であるアマゾンの躍進だ。アマゾンは買収や事業面での提携などを通して、生活必需品から耐久財、各種サービスなど多様な業種が提供してきたビジネスを取り込んでいる。その結果、多くの消費者が既存の小売店などからアマゾンに流れ、アマゾンのシェア拡大と、その他企業のシェア縮小が進んでいるとみられる。
この流れをどう食い止めるか、多くの企業が妙案を見いだせていない。今後も、アマゾンは自社のプラットフォームに企業を取り込み、自社の事業範囲とシェアの拡大に注力するだろう。アマゾン以外のIT企業も、同様の取り組みを進めている。企業は競争のさらなる激化に直面する可能性がある。
アマゾンが狙うさらなる“ネットワーク”の拡大
一般的に、アマゾンのビジネスモデルは生態系に似ているといわれる。それは、ある種の生物が徐々にその活動範囲を広げていくように、アマゾンが小売りやドラッグストア、スポーツ用品関連企業などをオンラインのショッピング・プラットフォームに取り込んで事業の範囲を広げ、自社の成長につなげることをいう。
ただ、アマゾンの狙いを“生態系”という概念だけでとらえることは難しいだろう。同社が目指しているのは、自ら市場を生み出し付加価値を獲得し続けることだ。昨日とは異なるビジネスを行い、明日にはまた新しい事業に進出するという貪欲な拡大志向である。つまり、同社は常に“イノベーション”を生み出すことを目指しているのである。
この目的のためにアマゾンが重視しているのが、情報システムとしてのネットワークを広げることだ。アマゾンの生態系の拡大とは、自社の情報ネットワークに多くの企業や個人を取り込む手段の一つなのである。そこで重要なことは、買収や提携などのさまざまな手段を用いてアマゾンの提供するサービスの利用者を増やすことだ。