ここで問題になるのは、総合金融におけるイオンの出資比率です。総合金融における中核となっているのは、イオンフィナンシャルサービスという会社ですが、この会社にはイオンは100パーセント出資しているのではなく、半分程度しか出資していません。ということは、イオンフィナンシャルの稼いだ利益のうち、半分しかイオンに帰属されないということです。
そのため、企業集団全体の業績を示す連結損益計算書では、いったんすべての利益を合算するような表示をしつつも、最終的に子会社の利益のうち、親会社に帰属しない部分を「少数株主利益」という項目で削除する計算手続きが行われています。
つまり、イオングループでは業績が落ち込んだ会社の多くが100パーセント出資であったのに対し、業績を伸ばした会社の多くが半分程度の出資だということです。業績を伸ばしたグループ会社の利益が丸々イオンに帰属するのではなく、その半分しか帰属しません。そのかわり、業績を落とした事業のロスなどは、丸々イオンに帰属してしまうのです。その結果、イオンの当期純利益が5年前は745億円もあったのに、直前期には112億円まで大幅にダウンしてしまったのです。
筆者は、このデータをみて「これは、きつい」と嘆息せざるを得ませんでした。イオンはGMSで3兆円を超える売上を上げながら、その事業の営業利益がたったの24億円程度になっていたということですが、これは巨大なビジネスを営みながらも、ほとんど利益を獲得できていないことを意味します。これを立て直せないと、将来はエライことになってしまうのです。
競合他社はどうなっているのか?
では、イオンよりもシェアの低い会社はどうなっているのでしょうか。
ここに掲げたのは、フジ(四国)、ヤオコー(埼玉)、平和堂(滋賀)ですが、いずれも業績の上昇傾向が見受けられます。これをみても、スーパー業界全体の業績が悪化しているのではないことがわかります。
業績凋落を食い止めた先例
では、イオンはこの経営難をどのように克服していけばよいのでしょうか。
実はイオンに先行して、凋落から復活を果たした先例があります。それが、近年のヤマダ電機です。
ヤマダは、過去に野放図な店舗拡大策をとり、その結果、業績を悪化させました。たとえば、上記表の平成22年(2010年)3月期には売上高が2兆円を突破し、その翌年には最高益を上げたにもかかわらず、それが長続きせず業績は低下し、最高益だった平成23年(11年)3月期には707億円もあった当期純利益が、平成27年(15年)3月期には93億円にまで縮んでしまいました。