内燃機関のクルマ、市場から締め出される
日産が新型リーフの販売増に自信を示すのは、実用性を高めたからだけではない。この7年間でEVを取り巻く環境が様変わりしたためだ。英国とフランスは40年にガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する政策を発表。世界最大の自動車市場である中国では、自動車メーカーにEVなどの環境対応車の一定以上の販売を義務付けるのに加え、同じくガソリン車、ディーゼル車の販売禁止を検討している。都市部での大気汚染が深刻なインドでも同様の動きが出ており、近い将来、内燃機関のクルマは市場から締め出される傾向にある。
こうした動きに対応して自動車メーカー各社も、EVシフトを鮮明にしている。フォルクスワーゲン(VW)は、ディーゼル不正問題の影響もあってEVの開発に注力、EVのラインナップを拡充して25年にEV販売比率を最大25%にまで引き上げる計画。ダイムラーもEVの新商品を積極的に投入して、25年までにEV販売比率を25%にする。ボルボは19年に全モデルを電動化する計画を公表、ジャガー・ランドローバーも20年から販売する全モデルを電動化する方針だ。
電動化技術に経営資源を集中するため、SUBARU(スバル)はディーゼルエンジンの開発から撤退、ホンダもディーゼルエンジン事業を縮小させる。日産のダニエレ・スキラッチ副社長は「日産が初代リーフを市場投入した時、日産はどうかしていると言われた。それが今や各社が日産を追いかけている」と話す。
自動車業界の環境対応車のトレンドは完全にEVとなっているだけに、EVで先鞭をつけてきた日産は「初代リーフは時代の先駆者。(2代目は)今後の日産のコア」(西川社長)と言い切る。
EV一色への違和感
ただ、規制も自動車メーカーもEV一色となっている現状に違和感を抱く意見もある。「現在のEVシフトは規制によってつくられたもの。消費者が不便なEVを選択するのかは疑問」(輸入車メーカーの日本法人社長)だからだ。環境対応車の販売を一定比率義務付けられる自動車メーカーも、「EVの新商品を投入しても、本当に売れるのか」を懸念している。
新型リーフは価格について約315万円からと、航続距離を伸ばして、自動運転機能などを追加しながら、初代リーフからほぼ据え置きとされた。国内では約40万円の補助金が支給されるため、200万円台で購入できる。米国での価格は公表されていないものの、カリフォルニア州などのゼロエミッション車規制(ZEV規制)などをクリアするために「(損を覚悟しても)販売台数を確保するため、戦略的な価格設定にするしかなかったのでは」とライバル自動車メーカーの役員は分析する。
実用性を高めた新型リーフを発表し、EVシフトの追い風に自信満々の日産。しかし、現状、世界販売に占める販売比率が0.5%のEVが本格的に普及するのかは、依然として不透明だ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)