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調査は、彼女の事務所兼自宅で行いました。事業概況を聞き、帳簿を確認します。家賃の60%を「地代・家賃」として計上していたので、根拠を尋ねました。調査対象者いわく、このワンルームの90%を事務所用スペースとして使用しているので、それでも少ないとのこと。確かに、部屋の片隅に化粧道具と衣類が半畳ほどのスペースにまとめられており、応接セットと作業机、パソコンで区切られた空間が事務所のように装われています。床を確認したところ、絨毯には家具を大きく移動させた痕跡やソファが長期間配置されていた凹みがありました。調査に際し、家具を移動させ、事務所スペースを広げたのでしょう。事務所兼自宅の納税者がよく行う調査対策です。調査対象者から毎日の作業時間を聞き取り、按分して、40%の地代・家賃とすることとしました。
いよいよ、売り上げについて言及します。取引先は3社あり、作業量に応じて毎月報酬が支払われているようでした。3社以外の売り上げや雑収入もなく、コミックマーケットでの売り上げの記載はありません。
しかし、消耗品費を確認すると、印刷業者への支払いを年に数回行っていました。これについて聞き取りを行うと、「それはプライベートでつくった作品に関する出費です」と、経費算入が認められないような回答。粘り強く説得しましたが、売上除外を認めないので、ファイルからSNSの画面を印刷したものを取り出し、眼前に突きつけました。それを見て観念したのか、コミックマーケットで自作したイラスト集を販売、売り上げは除外していることを認めました。印刷代金をすべて経費にしており、印刷業者とのメールのやりとりから印刷部数を確認、販売金額を乗じて除外金額を算出しました。
国税局内のパソコンはインターネットが制限されているので、スマートフォンが普及していなければ、この不正の発見は難しかったかもしれません。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)
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