最近の消費増税、経済成長に本当に悪影響はあったのか…総選挙前に増税インパクトを再考
10月の総選挙に向けて、安倍首相は、2019年10月の消費増税分の財源に関する使い道の見直しを行い、その財源の一部を子育て支援や教育無償化に充当する検討に入った。どうやら、2019年の増税は予定通り実施する政治的な戦略で、選挙戦に挑む模様だ。
過去の解散総選挙で信を問い、増税を二度も先送りした安倍首相が、今回の選挙戦で、このような戦略を採用する理由は何か。筆者は、9月8日に内閣府が公表した四半期別GDP「2017年4-6月期 2次速報値」に深い関係があると考える。この速報値によると、同期における実質GDP成長率は、前期比0.6%(季節調整値)であり、これは年率換算で2.4%もの成長であったことを意味する。
これは比較的高い成長率である。というのは、内閣府が推計した図表1の潜在成長率からも明らかだが、1980年代の実質GDP成長率(年平均変化率)は4.4%、90年代は1.6%、2000年代は0.7%(リーマン破綻といったアメリカ発の金融危機の影響を除くため、2000年-08年の平均を取ると1.4%)であり、2.4%という成長率は90年代の平均的な成長率を上回るためである。
にもかかわらず、2014年の消費増税の悪影響が現在も継続しているという意見も多いが、これは本当に正しい見方であろうか。
そもそも、消費増税の影響を比較するデータは、「1989年(消費税導入時:税率0%→3%)」「97年(前回増税時:税率3%→5%)」「2014年(今回増税時:税率5%→8%)」の3つがある。結論から述べるならば、トレンド成長率の影響を一定の前提で取り除き、3つのデータを比較すると、14年の影響は「もはや存在しない」と判断できる。以下、この理由を簡単に説明しよう。
正しい消費増税のインパクト
まず、消費増税のインパクトは、実質GDPのトレンド成長率の影響を取り除いて評価する必要がある。例えば、トレンド成長率(前期比)が1.2%の「ケース1」と0.5%の「ケース2」があるとしよう。このとき、増税後の実質GDP成長率(前期比)が▲2%でも、ケース1の増税インパクトは▲3.2%(=▲2%-1.2%)、ケース2の増税インパクトは▲2.5%(=▲2%-0.5%)と評価するのが妥当である。すなわち、実際に実現した「実質成長率」と「トレンド成長率」の乖離で判断するのが望ましい。