東芝、メモリ事業売却で不可解な点…「クロス取引」で監査法人が問題視する可能性も
9月20日、東芝は半導体メモリ子会社である東芝メモリについて、米投資会社のベインキャピタルを中心とする日米韓連合との間で株式譲渡契約を締結することを取締役会で決議した。これを受けて同28日、日米韓連合と売却契約を結んだ。あとは10月24日に予定されいている東芝の臨時株主総会で承認されれば、正式に東芝メモリ株の売却が決定する。
これで、最大の懸案だった債務超過が解消される――。と、多くのメディアは報道しているが、果たして本当だろうか。債務超過が解消できたとしても、ギリギリの解消になるか、場合によってはできないかもしれない。
「債務超過」の意味
まず、基本的な話として、「債務超過」の意味を確認しおこう。おそらく、記事を書いたりテレビでしゃべっている当人がちゃんと理解していないからだと思われるが、「債務超過」の意味からして不正確な報道が目立つ。
話を複雑にしているのは、「債務超過」には一般的な意味と、日本独特の意味の2つがあることだ。
一般的な債務超過の意味は、貸借対照表において資産を負債が上回り、純資産がマイナスになる状態をいう。しかし、東芝の件で問題になっているのは、上場廃止理由としての債務超過だ。それは、純資産のマイナスではない。
東京証券取引所が定める上場廃止基準の「債務超過」の意味は、「連結財務諸表の純資産の額から新株予約権及び非支配株主持分を控除した額」である。東芝の場合、新株予約権はないので、これは純資産の内訳項目である「株主資本」に等しい。「株主資本」の「株主」の意味は、「親会社の株主」という意味である。つまり、純資産のうち、親会社株主持分だけに注目しているということだ。これは日本独自の見方である。
そのような見方がいいかどうか置いておくとして、東芝の2017年6月30日時点の純資産(連結)はマイナス2,233億円であるが、株主資本(連結)はマイナス5,042億円である。2,233億円のマイナスを解消すれば一般的な意味では債務超過が解消されるが、それでは上場廃止は免れないのだ。株主資本を5,042億円以上増加させなければならないのである。