男たちを教育したい
若い世代の男性は「草食系男子」という言葉に象徴されるように、性への関心が薄い傾向にある。若い男性はセックスにお金をかけない。アダルト雑誌やDVDをはじめ、風俗を利用する若い男性は少ない。今の性産業を支えているのは、40~50代だといわれている。このような現状を加藤氏は嘆く。
「そもそも、スイッチが入っていない人が多いんだろうね。ジゴロみたいな男もいないしね。昔なら火野正平さんみたいな色気がある男がいたでしょ。それに、映画なんか見ても、若い役者の絡みのシーンが減っている。それは下手だからだよ。絡みがうまい俳優といえば、津川雅彦さん。津川さんよりうまい人がいないと思う。手本になるような男がいないのかもしれない」
一方、40~50代の男性に対しても、思うところがあるようだ。
「40、50代で、“若い女がいい”っていう考えもダメ。大人の女性の魅力をわかるようにならないといけない。そういうのも、日本の男たちに教えていかなきゃいけない。五月みどりさんみたいな色気があれば、70歳だとして一度お願いしたいって思うじゃん。年齢なんて関係ない。女性もそういう人が増えたらいいよね」(同)
若い女性より大人の女性がいいと言えるのは、成熟した男性の証拠だ。そういった男性が増えてくれることを願う。
仕事は自立するためのもの
昨今、報道されるようになった“AV出演強要”について、見解を聞いた。
「AV強要に限らずだが、“うまい話”とか、“お金になる話”はトラブルに巻き込まれる可能性があると思って警戒すべきだと思う。強要されてではなく自らAVに出る場合でも、十分な覚悟もなく出るのは間違っている。誰にもわからずにこっそりとお金を稼ぐなんて、都合よくできるわけはない。インターネットがこれだけ進んでいる社会で、一生残るという想像力が足りない人が多いように感じる。やるなら胸張って“私はAV女優よ”と言えるプロ意識持ってやるべきだ」(同)
筆者もまったくの同感だ。AVにまつわる話題は、そもそもAVが悪のように表現されている感があるが、プロとして誇りを持って仕事をしているならば、誰にも恥じることはない。AV男優という仕事に、誇りと覚悟を持っていたからこそ、加藤氏はレジェンドと呼ばれるまでになったのだろう。
また、最近話題となっている“親公認AV女優”についても、意見を聞いた。
「娘がAVに出演することを公認する親は嫌いだね。“賛成する人なんかいないだろう”と思っている。そもそも、仕事をするのに親の承諾はいらないよね。親が喜ぶかどうかといった差はあるだろうけれども。俺がAV男優をしていることを、親父は喜んでいなかったと思う。だけど、俺が自分で選んだ仕事で自立しているということで、よしと思ってくれていた。俺は親を喜ばせるために仕事していたわけではなく、何よりも自分が生きるために仕事していたからね」(同)
筆者も、親公認AV女優には違和感を持つ。ひとつの“共依存”ではないだろうか。親も子も、自分の人生を生きるべきではないだろうか。
インタビュー中、印象的だったのは、加藤氏のポジティブな雰囲気だ。「楽しそうですね」と言うと、加藤氏は「自分が楽しくなきゃ、ヒトを楽しくできないからね」と笑った。
(文=道明寺美清/ライター)