訪日外国人の消費額は、国内の酒類市場以上
観光庁は、訪日外国人数が9月15日時点で2000万人を突破したと発表した。過去最高を記録した16年(暦年)の2403万人を上回るハイペースだ。
17年1~8月までの累計は、前年比18%増の1891万人。昨年同期と比較して286万人増えた。中国が9%増の488万人、韓国が42%増の466万人、台湾が8%増の311万人、香港が25%増の151万人。これら4カ国・地域で全体の4分の3を占める。
しかし、中国からの観光客は減ることになりそうだ。中国当局が一部の旅行会社に「日本への団体旅行を制限せよ」と通達したと報じられた。日本を訪れる中国人のうち4割が団体ツアーといわれており、その影響は小さくない。
中国当局は資金流出を防ぐため、海外での消費を厳しく監視している。海外で購入した高額品の関税を引き上げたことで、中国人の爆買いがストップしたことは記憶に新しい。転売を目的とした高額品の大量購入が姿を消したため“中国人御用達”の店は閑古鳥が鳴いた。
爆買いが一服し、1人当たりの支出は減少したが、訪日外国人は増え続けており、消費総額は増加した。リピーターは体験重視の「コト消費」と呼ばれるグルメ食べ歩きや、観光地や温泉地巡りを楽しんでいる。外国人が地方にも足を向けるようになり、宿泊施設や飲食店が増えて地価を押し上げた側面もある。
16年の訪日外国人旅行消費額は、前年比8%増の3兆7476億円で過去最高となった。ビールなど酒類の国内市場規模3兆5738億円(16年度、矢野経済研究所調べ)を上回り、清涼飲料の3兆8787億円(16年、全国清涼飲料工業会調べ)に匹敵する。訪日外国人の需要は今や、巨大な産業となった。
政府は20年の訪日外国人数の目標を4000万人に倍増させた。今は中国、韓国、台湾、香港からの旅行者が中心だが、他の東南アジア諸国や欧米など多様な国・地域からの集客が課題となる。
(文=編集部)