日本には根付かないといわれていたハロウィンだが、毎年予想以上の盛り上がりを見せている。日本記念日協会の推計では、昨年はバレンタインデー以上の市場規模に成長したとされるが、今年の場合は約1305億円と昨年から約3%のダウンになると見込まれている。
晩夏からショッピングセンターなどではハロウィンの飾り付けが始まり、関連商品も増えているように感じる。仮装を楽しむイベントも盛況のようだが、なぜ推計市場規模が縮小してしまったのか。
日本記念日協会の代表理事を務める加瀬清志氏は、「その理由は衆議院議員選挙にあるのではないか」と語る。例年なら10月第2週あたりにハロウィン特集を組むテレビ番組が多いが、今年はその枠が選挙に取られてしまい、直前情報に切り替えたメディアもあるという。
「市場規模の拡大には、メディアからの情報とアナウンス効果が大きいものです。しかし、今回は選挙があることにより、例年よりも少なくなってしまいました。ハロウィン関連のテレビCMを流すチャンスも減り、テレビだけでも約10億円もの損失があるのではないでしょうか」(加瀬氏)
衆議院が突然の解散・総選挙を迎えたことにより、こうしたイベントの市場規模にも影響を及ぼしているようだ。
「それでも、推計市場規模が大幅にダウンしなかったのは、日本にハロウィン文化が定着しつつあることも挙げられますが、飲食店でのテイクアウト需要の拡大や、和菓子店やすし店などもハロウィン関連の商品を扱うようになったからかもしれません」(同)
ファストフード店などでは、ハロウィンを意識したテイクアウト商品が多くなってきた。これらが伸びを見せたことにより、大幅ダウンを避けられたのではないかと分析している。
各企業がハロウィンを商機と考えていることも大きい。若者ならホラー要素を、ファミリー層にはかわいらしい要素を取り入れるなど、ターゲットに合わせた戦略を練っている。また、仮装をして騒ぐだけというイベントに飽きた人たちの掘り起こしも底上げにつながっているようだ。
「江崎グリコでは、10月31日を『クレアおばさんのシチューの日』として記念日登録しています。ハロウィンの起源でもある収穫祭を意識したものでもあるのですが、日本でも今後は秋祭りの要素を取り入れつつ、実りの秋を満喫するようなイベントになっていくかもしれません」(同)
市場規模の算出方法
今年は昨年よりもダウンすると推計されている市場規模だが、そもそもこの数字はどのように導き出されたものなのだろうか。
「ハロウィンがあることによって生まれる市場を、8月ごろから調査して推計したものです。食品や仮装グッズ、レストランのメニューなど、120のカテゴリを調査し、過去のデータとの比較、積算などを行いながら推計しています」(同)
同協会が発表する数字はあくまで市場規模の推計で、経済規模ではないという。そのため、実際の売上高そのものではないが、日本の主要企業の多くは同協会へ記念日登録しており、そのチャンネルを生かしてデータを取得することも多いという。
同協会ではほかにもバレンタインデーなどの推計市場規模を発表している。しかし、クリスマスについてはノータッチだという。その理由を加瀬氏はこう説明する。
「以前はやっていたのですが、6000~7000億円と規模が大きすぎるので、たとえば1割の誤差でも何百億円も変わってしまいますので、数年前から推計をやめました」
大きな盛り上がりを見せるハロウィンは、莫大な経済効果を生み出すイベントに成長した。しかし、選挙という思わぬ要因によって、今年はその市場規模が縮小してしまうかもしれない。今年はハロウィン当日が平日ということもあり、どの程度盛り上がるのか未知数だ。注目したい。
(文=OFFICE-SANGA)