アスクルの17年5月期連結決算は、売上高が前期比7%増の3359億円、営業利益が4%増の88億円、純利益は81%減の10億円だった。
2月16日、埼玉県三芳町にあるアスクルの物流センターで火災が発生し、商品の多くが焼けた。個人向けネット通販事業「ロハコ」で商品が出荷できなくなり、他社に顧客が流出した。ロハコの売り上げは期初には480億円を計画していたが、火災の影響で390億円にとどまり28億円の営業損失を出した。アスクルの決算も火災による特別損失122億円を計上したため、純利益は大幅に減少した。
今期も火災の影響が残る。18年5月期の連結営業利益は61%減の35億円に落ち込む見通し。今期中に火災の影響はすべて解消し、19年5月期は業績をV字回復させるとしている。
アスクルは大火災の痛手から立ち直っていない。その最中に、本丸である法人向け通販にアマゾンビジネスが殴り込みをかけてきた格好だ。アスクルがアマゾンをどう迎え撃つのかに関心が集まっている。
アマゾンに対抗して生鮮食品を宅配
アスクルとセブン&アイ・ホールディングスは11月28日、生鮮食品の宅配「IYフレッシュ」を始める。アスクルがロハコで16年に始めた、配送時間を1時間刻みで指定できるサービスと、セブン傘下のスーパー、イトーヨーカドーなどとの商品を組み合わせる。
野菜などの生鮮食品や調理キット5000点を販売する。まず、東京都心の新宿区と文京区で開始。18年中に東京23区、20年をメドに首都圏に広げる。
11月16日にはセブンの通販サイト「オムニ7」とロハコで商品情報を共有し、お互いに顧客を紹介するサービスを始める。物流や通販サイトの運営も、今後は共同で取り組む。
両社は7月6日、ネット通販事業で提携すると発表していたが、その具体策が明らかになったわけだ。
これに対してアマゾンは4月21日、野菜や果物、鮮魚といった生鮮食品の宅配サービス「アマゾンフレッシュ」を都内で始めた。アマゾンのサイトやアプリで注文を受けると最短4時間で自宅や職場などに届ける。購入できる食料品は飲料などと合わせて1万7000点以上で、キッチン用品や日用品などを含め合計10万点以上そろえる。
個人向けネット通販は、アスクルはロハコ、アマゾンはプライムナウ。アスクルの本丸である法人向け通販にアマゾンはアマゾンビジネスをぶつける。ネット通販の最前線でアスクルはアマゾンと真正面で対峙することになる。
ネット通販の普及で物流の人手不足が深刻化してきた。アマゾンは配送も自前で行う方向だ。
ネット通販の次の戦場は、配達員をいかに確保できるかの勝負になる。
(文=編集部)