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白河桃子「ここがおかしい」

炎上CM制作を企業内で誰も止められない理由

文=白河桃子/少子化ジャーナリスト、働き方改革実現会議民間議員、相模女子大学客員教授
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炎上CM制作を企業内で誰も止められない理由の画像1「JOY」(P&G)のPR動画「JOY公式HP」より

 なぜCMは炎上するのかという点が、最近よく話題になっています。それも女性をターゲットにして長年マーケティングを行ってきた会社のCMが炎上したりするのです。たとえば、オムツや化粧品のCM、地方自治体のPR動画も派手に炎上しています。
 
 その原因は同じだと思います。まず、「つくり手」です。「このぐらい、いいよね?」というつくり手の感覚が、明確に時代とずれているからだと思います。この「時代とのズレ」の原因は何かといえば、「多様性のなさ」でしょう。それもマスコミ業界特有の「働き方の多様性のなさ」です。

 炎上しやすいのは、「女性を性的対象として扱うもの」「男女間の役割分担を助長するもの」なのですが、この課題に関して、CM制作プロセスにおける意思決定の場に、当事者である女性や子育て経験者がいるでしょうか? ただ「いればいい」というものではなく、本当に言いたいことを言えているのでしょうか?

炎上CM制作を企業内で誰も止められない理由の画像2『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(白河桃子、是枝俊悟/毎日新聞出版)

 ダイバーシティ(多様性)は「ただあるだけ」ではビジネスに影響はなく、ダイバーシティ&インクルージョン(包含)がないと、効果が出ないのです。
 
 子育て中の女性は、「24時間稼働」「クリエイティブな仕事は、労働時間は関係ない」「長時間かけたほうが、いいものができる」という広告の現場では肩身が狭い。「夜の会議」には物理的に出られません。また時短勤務をとっていると、「迷惑をかけているようで、なかなか強く意見がいえない。評価も低いし」という声があります。これでは「子育て真っ最中の当事者」の意見は、意思決定に反映されません。

 また、広告業界の女性は「下ネタでも平気な顔で受け流せるフリをしないと、やっていけない」という現状があります。男と同化するか、または男性に敵視されないポジションをうまくとることで、サバイバルしてきたのです。

 宮城県とサントリービールの動画が炎上し、どちらも「女性を性的な対象として扱っている」と取り下げになったことがありました。壇蜜さんの色っぽい唇をアップにし、その唇から「肉汁とろっとろ」「ほしがり」などのワードを連発させた宮城県。「炎上上等」でアクセス数は上がっても、宮城県のためになったのでしょうか?
 
 論議を生むCMをつくって世間の注目を浴びても、スポンサーのブランドやイメージを悪くしては元も子もないのではと思います。

働き方改革の本当の目的

「どうして誰も止めなかったのだろう?」と炎上動画を見るたびに不思議に思います。広告代理店の友人やブランディングの専門家に聞いたら、こんな返事が返ってきました。

「泣いてでも止める人がいないと止まらない。だって大勢がいいというものに異議を唱えるのは、すごく難しいことだから」

白河桃子

白河桃子

ジャーナリスト、相模女子大学大学院特任教授、昭和女子大学 客員教授、東京大学大学院情報学環客員研究員。
東京生まれ。慶応義塾大学文学部卒、中央大学ビジネススクールMBA取得。住友商事などを経て執筆活動に入る。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員などを務める。著書に『働かないおじさんが御社をダメにする ミドル人材活躍のための処方箋』(PHP 新書)など25冊以上がある。
白河桃子のプロフィール(相模女子大学の公式サイトより)

Twitter:@shirakawatouko

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