なぜCMは炎上するのかという点が、最近よく話題になっています。それも女性をターゲットにして長年マーケティングを行ってきた会社のCMが炎上したりするのです。たとえば、オムツや化粧品のCM、地方自治体のPR動画も派手に炎上しています。
その原因は同じだと思います。まず、「つくり手」です。「このぐらい、いいよね?」というつくり手の感覚が、明確に時代とずれているからだと思います。この「時代とのズレ」の原因は何かといえば、「多様性のなさ」でしょう。それもマスコミ業界特有の「働き方の多様性のなさ」です。
炎上しやすいのは、「女性を性的対象として扱うもの」「男女間の役割分担を助長するもの」なのですが、この課題に関して、CM制作プロセスにおける意思決定の場に、当事者である女性や子育て経験者がいるでしょうか? ただ「いればいい」というものではなく、本当に言いたいことを言えているのでしょうか?
ダイバーシティ(多様性)は「ただあるだけ」ではビジネスに影響はなく、ダイバーシティ&インクルージョン(包含)がないと、効果が出ないのです。
子育て中の女性は、「24時間稼働」「クリエイティブな仕事は、労働時間は関係ない」「長時間かけたほうが、いいものができる」という広告の現場では肩身が狭い。「夜の会議」には物理的に出られません。また時短勤務をとっていると、「迷惑をかけているようで、なかなか強く意見がいえない。評価も低いし」という声があります。これでは「子育て真っ最中の当事者」の意見は、意思決定に反映されません。
また、広告業界の女性は「下ネタでも平気な顔で受け流せるフリをしないと、やっていけない」という現状があります。男と同化するか、または男性に敵視されないポジションをうまくとることで、サバイバルしてきたのです。
宮城県とサントリービールの動画が炎上し、どちらも「女性を性的な対象として扱っている」と取り下げになったことがありました。壇蜜さんの色っぽい唇をアップにし、その唇から「肉汁とろっとろ」「ほしがり」などのワードを連発させた宮城県。「炎上上等」でアクセス数は上がっても、宮城県のためになったのでしょうか?
論議を生むCMをつくって世間の注目を浴びても、スポンサーのブランドやイメージを悪くしては元も子もないのではと思います。
働き方改革の本当の目的
「どうして誰も止めなかったのだろう?」と炎上動画を見るたびに不思議に思います。広告代理店の友人やブランディングの専門家に聞いたら、こんな返事が返ってきました。
「泣いてでも止める人がいないと止まらない。だって大勢がいいというものに異議を唱えるのは、すごく難しいことだから」