「プロ経営者」を見る目が厳しくなった。LIXILグループの藤森義明社長兼CEO(最高経営責任者)、ベネッセホールディングスの原田泳幸会長兼社長が相次いで辞任、6月の株主総会で退陣する。
プロ経営者は企業を活性化させる切り札として持ち上げられたが、最近は旗色がよくない。短期的に業績を上げることは容易ではない。
資生堂の魚谷雅彦社長の勤務評定はどうだろうか。米コロンビア大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。外資系企業を渡り歩き日本コカ・コーラ社長などを歴任したプロ経営者のひとりである。
魚谷氏は2014年4月、資生堂の社長に就任した。140年の歴史を誇る同社で、役員経験のない外部の人間が社長に就任したのは初めてだった。
当時、会長兼社長だった前田新造氏から「資生堂のマーケティングを立て直したい。手伝ってほしい」と頼まれ、マーケティング部門の統括顧問を引き受けた。顧問でありながら販売子会社や専門店に足を運び、現場の担当者の生の声に耳を傾けた。この仕事ぶりを前田氏は高く評価した。
社外取締役らで構成する役員指名諮問委員会に、前田氏は魚谷氏を後継候補のひとりに挙げた。委員の間には、「ぽっと入ってきた人に資生堂の文化がわかるのか」といった否定的な意見があった。だが、「低迷を続ける自社ブランドを再生するためには、マーケティングがわかる人でなければならない」という前田氏の主張が通り、全会一致で魚谷氏を社長に迎えることが決まった。
隠然たる影響力を持つ創業家出身の福原義春名誉会長の了解を得ていたことはいうまでもない。
こういった経緯で社長に就いたのだから、いやが上にも結果を出さねばならない。社長就任2年目の魚谷氏は合格点を取っているのだろうか。
高級化粧品の爆買いで、国内は絶好調
魚谷氏にインバウンド(訪日客)消費の神風が吹いた。中国人観光客の高級化粧品の爆買いである。
15年12月期連結決算(決算期変更により国内のみ9カ月決算、海外は12カ月の変則決算)の売上高は7630億円。従来予想に比べて30億円増えた。純利益は従来予想(130億円)を100億円上回り230億円となった。
国内事業の売上高は2667億円で、前年同一期間比10.9%増。営業利益は305億円で同52.1%増と好調だった。
インバウンド需要が追い風になり、高価格帯ブランドの「クレ・ド・ポー ボーテ」「SHISEIDO」が売れた。さらにコスト削減も奏功し、利益を押し上げた。インバウンド関連の売り上げは120億円増え、国内の増収分(310億円)の4割を占めた。