だが、インバウンド需要は15年がピークで、今後は伸びしろが小さいという見方が広がっている。16年12月期の売上高の予想は8720億円で、前年同一期間と比較して1.0%増にとどまる。営業利益は380億円と同14%減る見込みだ。
インバウンド需要の限界説を吹き飛ばし株価は上昇
ところが資生堂はインバウンド需要の限界説を吹き飛ばす決算を発表した。16年1~3月期連結売上高は2132億円で、前年同期比1%増。インバウンド関連売り上げは100億円と倍増した。高価格帯の商品を中心にリピーターの購入が増えているという。営業利益は実質ベースで76%増の220億円だ。
資生堂は国内事業で営業利益の8割以上を稼ぐ。国内事業の1~3月期の売上高は前年同期比4.5%増の1045億円。営業利益は同44.2%増の188億円となった。
16年12月期通期のインバウンド向け売上高の見通しは340億円と従来予想から70億円上方修正した。
インバウンド需要が拡大基調を続けていると確認されたことから、資生堂の株価は6月1日には、年初来高値の2938.0円を付けた。爆買い効果で15年8月10日に3327.5円を付けて以来の高水準だ。
先送りしたマーケティング費用が懸念材料になるか
魚谷氏は商品やブランドを見直した。各ブランドを価格帯や年齢層、顧客ニーズに応じて再定義し、マーケティング費用を投じる優先順位をブランドごとに明確にした。こうした方針に従い、15年12月期から3年間で計1000億円のマーケティング費用を上乗せする計画だ。
資生堂は広告費や販売促進費などが売上高に占める割合(売上高販管費比率)が66%に上る。化粧品という特性もあり、消費者向けの商品をつくっているほかのメーカーに比べて極端に高い。たとえば、自動車や電機メーカーは10~20%台だ。化粧品業界はマーケティングの巧拙で勝負が決まるといっても過言ではない。広告費、販促費は必要不可欠だ。
1~3月期決算ではマーケティング費用の計上を先送りした。先送り額は40億円と、営業増益額(95億円)の4割を占める。マーケティング費用は4月以降に計上され、営業利益を押し下げる可能性が高い。
販社制度を廃止し働き方を改革
魚谷氏はマーケティングのプロである。15年10月、本社の企画・マーケティング部門を切り離し、販売子会社に統合した。企画から販売までを行う「資生堂ジャパン」に一本化したわけだ。