高すぎる前受金の支払いには注意が必要
――てるみくらぶにしてもそうですが、はれのひは会社としての“引き際”がみっともないですね。
原田 最近は“引き際”の悪い倒産が目立っていると感じます。理由は経営者の資質としかいえませんが、はれのひのケースは夜逃げ同然です。成人式の当日である1月8日に事業停止したわけですが、なぜ9日ではなかったかを探る必要があります。もちろん、9日でも被害者は出ますが、ここまでの大騒ぎにはなっていなかったはずです。
また、前受金を本当に着物の発注に充てていたのかどうかについては疑っています。実際は金融機関への返済に充てられていた可能性もあるからです。そのため、そもそも8日に着物がなかった可能性があります。
――前受金ビジネスがすべて悪いわけではないですが、何が問題なのでしょうか。
原田 申し上げた通り、前払いの期間が長すぎること、ほぼ100%を前払いすることが問題です。ただし、前受金の規制をするのも簡単ではなく、預託金が必要になるため起業の意欲が低下するという問題も出てきます。
――一般消費者としては、目利きが必要になりますね。
原田 新興勢力はバックグラウンドがないので、まず事業の可能性を語ります。株式公開などの夢を提示するわけですが、「その夢に実現性はあるのか」という視点が必要になります。「この業界は急成長できるので可能性がある」と提示されたとしても、選ぶ側、入社する側、お金を貸す側が「この業者が言っていることは正しいのか」と選別する姿勢が必要です。
――選別する目は、どうすれば養えるのでしょうか。新卒者および一般消費者の立場からお願いします。
原田 新卒者については、就職活動の一環として大学のキャリアセンターも「業界分析をしなさい」と指導しています。そこで、大手の売り上げが1%しか伸びていないのに新興勢力が急成長していれば、「この数字はどうなんだろう」と疑うことも必要です。また、「この3年で従業員は2倍になりました。売り上げは1.2倍に伸びました」と書かれていれば、「利益は大丈夫か」という目を持つことが大切です。
一般消費者については、「高い買い物をする際は、なるべく前受金は支払わない」ということが大切です。旅行なども同様ですが、業者に対して「なぜ、この金額の前受金を支払う必要があるのですか。何か業法に則っているのですか」と遠慮なく質問すべきです。選ぶのは我々消費者であり、前受金を支払うかどうかは吟味すべきです。そもそも、2年前に100万円単位の前受金を支払うことは、2年間100万円を融資しているのと同じです。「2年前に100万円を入金しなければ契約はできません」と言われて支払う行為は、冷静に考えれば無防備です。
今の時代は個人が決済条件を吟味して、その会社の信用調査をしっかり行うべきです。一人ひとりが情報マンの感性を養うことができなければ、損をする時代です。
(構成=長井雄一朗/ライター)