ビジネスジャーナル > 企業ニュース > フグの肝、食べると死の恐れ
NEW
垣田達哉「もうダマされない」

フグの肝、食べると死の恐れ…安全な店などない、佐賀県が可食化を国に要請

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
フグの肝、食べると死の恐れ…安全な店などない、佐賀県が可食化を国に要請の画像1「Thinkstock」より

 1月15日、愛知県蒲郡市のスーパーマーケット「スーパータツヤ」が、ヨリトフグの肝(肝臓)を販売していたことが発覚し、保健所が回収命令を出すという事件が起きた。11パック販売されたうちの9パックは回収され、2パックは消費されていた(18日現在、愛知県発表)が、今のところ健康被害は報告されていない。16日、愛知県警が食品衛生法違反の疑いで同店の家宅捜索をした。報道によると、店側は「無毒で、売っても構わないと思っていた。長年、肝臓を販売していた」(17日付朝日新聞)という。

 フグの肝臓は、どんなフグであっても販売も提供も食品衛生法で禁止されている。フグ中毒は死亡率が高く、特に肝臓に毒がたまりやすい。

 ところが、このフグの肝臓の可食化に向けた試みが過去になされている。佐賀県は国に2回提案しているが、食品安全委員会は2回とも却下している。最初は2004年12月、佐賀県は構造改革特別区制度に基づき、養殖トラフグの肝臓の可食化を求める検討要請を内閣官房に提出した。それを受けて厚生労働省は、食品安全委員会にリスク評価を依頼した。このとき、佐賀県は次のように主張した。

「フグ毒のテトロドトキシンは、トラフグ自らが体内で産生するのではなく、ビブリオ・アルギノリチカス等の海中の細菌が産生し、食物連鎖により体内に蓄積すること、その上で、毒性のないトラフグの養殖技術とされる囲い養殖法を応用し、トラフグの餌となる有毒生物を遮断して養殖されたトラフグの肝は無毒である」

 フグ毒はフグ自体が生み出すのではなく、細菌が含まれた餌を食べることで生み出されるから、囲いをした養殖場で無毒の餌を与えれば、フグの肝臓も無毒になるという理屈である。ところが食安委は「フグ毒によるトラフグの毒化機構は十分に解明されていない」「フグの毒化機構が解明されていない以上、養殖方法における危害要因及び制御するべきポイントを特定することが不可能である」「提案された養殖方法について安全性確認のための実験データが現時点では十分とは言い難いため、本養殖方法が恒常的にトラフグの無毒化に有効であるかどうかの判断が難しい」として、「食品としての安全性が確保されていることを確認することはできない」と結論づけ、05年8月、提案を却下している。

 食安委は「確かに、餌が原因という説が有力だが、完全に解明されたわけではない。養殖方法も安全だという確証がない」としているが、これは当然のことである。

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

フグの肝、食べると死の恐れ…安全な店などない、佐賀県が可食化を国に要請のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!