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経営のヒストリーを振り返ると、富士フイルムの場合は、写真フイルム需要の低迷を構造改革によって乗り切った。現在、売上高の15%が画像(イメージ関連)、40%程度がヘルスケアなどからなるインフォメーションソリューション事業、残りがオフィス関連などのドキュメントソリューション事業からもたらされている。株価は、リーマンショック後の低迷を挟んでV字回復を遂げてきた。ただ、足許の株価はやや伸び悩み気味で推移している。この状況について、市場参加者は一段の経営改革を富士フイルムに求めているとみることもできる。
近年、米国の株式市場全体で株価が堅調に推移し、一部では株式のバブルが発生しているとの指摘もある。そのなかで、ゼロックスの株価は低迷している。オフィスでのペーパーレス化が進むなかで、市場参加者はゼロックスの成長が難しいと考えてきたといえる。かつて、ゼロックスは事務機器メーカーとして競争力を発揮し、一時はコピーをとることを、“ゼロックスする”と言うほどブランド力があった。しかし、同社はその後の環境の変化にタイムリーに対応することができなかった。その結果、ゼロックスは株主への価値還元への圧力に押されてコスト削減を優先せざるを得なくなった。いってみれば、経営が近視眼的になり、中長期的な視点で選択と集中を進め、成長分野を開拓することが難しくなっている。
ゲームチェンジを目指すコストカットの意義
今回の経営統合を考える上で重要なのは、富士フイルムを率いる古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)の判断だ。同氏は、デジカメの登場によって存在意義が低下した写真フイルム中心の事業構造を抜本的に見直し、その経験を技術力を生かしつつヘルスケアという新しい成長分野を開拓した。これは、イノベーションの良い例だ。
その発想は、いち早く成長分野を取り込んで、競争上の立場を優位なものに変えようとするものだ。攻撃は最大の防御というにふさわしい経営スタンスであり、業界の競争環境に変化をもたらすゲームチェンジャーともいえる。
富士フイルムは、今回の統合によって22年度までに年間17億ドル(約1,870億円)の収益改善が実現できると算定している。それが実現できれば、浮いた分の経営資源を技術開発、M&A(合併・買収)などに回し、さらなる成長戦略を描くことができるだろう。
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