朝山氏は日米を股にかけるベンチャー起業家で、14年6月に国内にテックビューロを設立、社長に就任。15年3月、独立系VC(ベンチャーキャピタル)の日本テクノロジーベンチャーパートナーズCC投資事業組合を引受先とした第三者割当増資で1億円を調達。その資金で、ビットコインとモナー(コイン)を取り扱っていたetwingsを買収してZaifを開設した。
Zaifの資本金は8億3013万円(資本準備金を含む)。新生銀行も出資しており、銀行が仮想通貨取引所に直接出資するのは初めてといわれた。
Zaifは17年12月16日、お笑いコンビ・かまいたちを起用してネットでの動画配信を開始した。かまいたちは、TBS主催のお笑いコンテスト「キングオブコント2017」で優勝した。Zaifは、かまいたちも所属するよしもとクリエイティブ・エージェンシーに依頼して、仮想通貨お笑い動画を製作。同CMは、Zaifという言葉がまったく出てこない内容になっている。
Zaifは2月16日、女優の剛力彩芽を起用したテレビCMの放送を全国で始めた。「ビットコインするならZaif~ハピネス篇~」と題したCMだ。黒いドレス姿の剛力が多数のダンサーとともに歩き、ビットコインのロゴ入りのリンゴにキスして「ビットコインするならZaif」とつぶやく。
コインチェックの流出事件を受けて1月29日、仮想通貨の業界団体「日本仮想通貨事業者協会(JCBA)」と「日本ブロックチェーン協会」は会員企業に対して、仮想通貨の広告を管理する態勢を整備するよう要請したばかり。テックビューロはJCBAに加盟し、朝山氏はJCBAの理事を務めているが、広告の自主規制を無視した格好になるわけで、物議を醸すことになりそうだ。
そのZaifはビットコインを0円で販売するという問題が報じられている。それも10億ビットコイン、日本円にして2200兆円に上る額だ。仮想通貨の信用を大きく揺るがす事態に発展しかねない。
DMM Bitcoin、ローラを起用したCM
仮想通貨取引所DMM Bitcoinは18年1月22日、ファッションモデルのローラを起用したテレビCMの放送を始めた。後輩役の女優でタレントの中川梨花の質問に、先輩役のローラが、ビットコインをピットイン、仮想通貨を仮装通過と勘違いするという、ダジャレのような内容になっている。
同社はゲーム・動画・電子書籍、英会話、FXなどのECサイトを運営するDMM.comのグループ会社。16年11月に設立した東京ビット取引所を、17年12月にDMM Bitcoinに商号変更。18年1月から仮想通貨の口座開設受付を始めた。資本金は2億9000万円で、仮想通貨の取扱銘柄は2種類。
仮想通貨CMの稼ぎ時を迎えた時にNEMの流出事件が起き、仮想通貨取引所、同取引業者の資産管理の安全性の問題が浮き彫りになった。フェイスブックは仮想通貨の広告を認めない方針を打ち出した。今後、テレビ業界や広告業界はどうするのだろうか。
(文=編集部)
※3月10日追記
金融庁は3月8日、仮想通貨交換業者7社に一斉に行政処分を下した。
1カ月間の業務停止命令を受けたのはビットステーション、FSHO(エフショー)の2社。業務改善命令はコインチェック(2度目)、テックビューロ、GMOコイン、バイクリメンツ、ミスターエクスチェンジの5社。テックビューロ、GMOコインは登録業者。残りの5社はみなし業者である。
ビットステーション、ビットエクスプレス、来夢のみなし業者3社は事業を断念し、仮想通貨交換業を廃業する。
FSHOはマネーロンダリングが疑われる取引の検証が不足していた。ビットステーションは顧客から預かった仮想通貨を創業者で筆頭株主だった経営企画部長が数回にわたりネコババしていた。新聞は「私的流用」と報じたが、いわば“ネコババ”だ。被害は3~8ビットコイン(300~800万円)だったが、全額弁済されており、顧客の資産は目減りしていないとしている。
Zaifを運営するテックビューロは、2月16日から女優の剛力彩芽を起用したテレビCMを流している。業務改善命令を出されたが、テレビCMは続けるのか。
グーグルは、6月から仮想通貨の広告を一切打ち切ると判断した。テレビ各局はどのような判断を下すのか。