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トヨタ、100年に一度の大変革…業界の主導者か、一部品メーカー転落の分岐点へ

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 重要なことは、特定の用途に限定したプロダクト(移動のための自動車という発想)ではなく、ネットワークシステムとデバイスである自動車が連動し、同期化する環境を実現することだ。それによって、物品や物流、移動、生活など必要に応じたサービスなどを提供することが目指されている。それを実現するひとつの手段がコネクテッドカーと考えられる。

重要なオープンイノベーションの促進

 
 e-パレットのコンセプトは、トヨタ単体の発想と技術力だけで実現するものではないはずだ。自動車がネットワークシステムとつながるスマートフォンのようなデバイスとしての機能を担うようになれば、車体の設計は自動車メーカーが行い、人工知能は他の企業が担うなど、複数の企業の協力によってひとつのプロダクトが生み出されるようになるだろう。

 それは、企業が自前の創意工夫によって変革を目指そうとする発想ではなく、オープンイノベーションの考えにほかならない。業種や企業に関係なく、必要な技術やコンセプトを組織外から積極的に取り組んでいくことが、コネクテッドカーの実用化には欠かせない要素となっていくだろう。

 トヨタに求められることは、他の企業の利害が絡み合うなかで議論のイニシアティブをとることである。そのためには、これまでの成功体験を捨てることも必要になるかもしれない。成長・重点課題分野に経営資源を配分しながら、当面のビジネスを支える経営手腕が求められる。

 それができれば、これまでにはない自動車のコンセプトにトヨタならではのアイディアや技術を埋め込むことが可能となる。反対に、議論の主導権を他企業に渡してしまい、集団の一企業としての存在に埋没してしまうと、一部品メーカーの地位に甘んじてしまうことも考えられる。その場合、トヨタの存在感は低下してしまうだろう。

 新しい発想の実用化は、過去の延長線上の発想で実現できるわけではない。世界各国の自動車、家電、IT企業などがコネクテッドカー市場の覇権を手に入れようとしているなか、ハイテク分野、バッテリーなどの基幹技術などで優位な技術力を持つ企業とのアライアンスを組んでいくことは、今後の変革に対応するためには不可欠だろう。それに加え、人工知能やネットワークサイエンスの分野で新しい理論の実用化を目指す企業家を支援し、次世代のICT環境を見据えた企業態勢を整備していくことが重要となるだろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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