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てんや、値上げ→客離れでてんやわんや?それでも圧倒的コスパ&美味さの秘密

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

てんやの不安要素

 こうしてみると、てんやは順調に成長していると思われるかもしれない。ただ、必ずしもすべてが順風満帆というわけではない。競争の激化で既存店売上高が低下していることが大きな懸念材料となっているためだ。

 以前は既存店売上高が順調に伸びていた。前年からの増減率は、12年が2.2%増、13年が6.4%増、14年が8.1%増、15年が3.6%増、16年が0.2%増となっており、長らく増収を続けてきた。しかし、17年は2.1%減と一転して減収に陥ってしまったのだ。競争の激化によりてんやの競争力が落ちてきている状況にある。

 1月11日から実施した値上げも懸念材料だろう。6種類のメニューを10〜50円値上げした。看板メニューの「天丼」は500円から540円になっている。定食のご飯は、これまでの「お替わり自由」を取りやめ、代わりにごはんの大盛りを無料としている。

 これにより客離れが起きた。実施した1月の客数は前年同月比3.3%減った。翌2月は5.1%減となっている。値上げにより割安感が薄れ、それを嫌気した人がてんやから離れていったとみられる。

 原材料費や人件費、物流費などのコストが上昇していることを考えると値上げは致し方ない面がある。17年のてんや事業の経常利益が前年から約4割も減っている状況だからだ。ただ、これほどの客離れは無視できないものがある。今後の経営を揺るがしかねない。

 とはいえ、客離れは起きたものの客単価が上昇したため、既存店売上高は比較的軽微な減少で済んでいる。前年同月比1月が0.4%減、2月が0.9%減となった。17年が2.1%減だったことを考えると、減少幅が縮小したと考えることもできる。そのため値上げが必ずしも失敗だったとはいえないだろう。

 値上げしてからまだ2カ月しかたっていないため、その影響は読みきれない。一方で店舗網は拡大していくため、成長は大いに期待できる。てんやの今後に注目していきたい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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