同業他社に加え、ディスカウントストア、業務用スーパー、ネット通販など、既存店にとっては脅威が増している。本部としては、次々と新規店をオープンすることで成長をアピールできるが、既存店のオーナーにとっては厳しい局面が続く。
「脱サラしてコンビニに参入する方が多いですが、経営はそれほど簡単ではないということでしょう。学生はコンビニ以外のバイトを選ぶことも多く、シフトは外国人頼みになるということも多いです。また、オーナーが休む暇もなく働くという例もよく聞きます」(谷澤氏)
ファミマは24時間営業を見直しへ
近年、コンビニをめぐる話題で評判が悪いのが、恵方巻きやクリスマスケーキなど季節商品の販売だ。ネット上では、毎年のように売れ残った商品が廃棄される様子がアップされている。
「本部は『ノルマなどはない』と言っていますが、ある程度の目標はあるのでしょう。これらの商品は、売れ残ればオーナーの負担になります。オーナーは、その仕組みのなかでしのぐしかないのです」(同)
一方で、新しい動きもある。17年10月には、ファミリーマートが24時間営業の見直しに着手することが報道された。これは、コンビニ業界のビジネスモデルを転換し得る動きとして注目される。しかし、セブンはこの流れには追従せず、あくまで24時間営業を貫く方針だ。
売り上げ不振や人手不足などに襲われるコンビニ。今後、新規出店にはブレーキがかかるのだろうか。谷澤氏は、懐疑的な見方を示す。
「コンビニは、まだまだ増えていくのではないでしょうか。本部としては、出店すればロイヤリティを確保できます。これは利益ではなく売上総利益(粗利益)に応じて徴収される仕組みが主流ですから、コンビニ業界の縮小は考えにくい。ただし、ファミリーマートのようにビジネスモデルを転換することはあり得ます」(同)
合従連衡が進んでいるのも、コンビニ業界の特徴だ。ファミリーマートとサークルK・サンクスの統合、ローソンとポプラの提携、スリーエフはコンビニ事業の一部を分社化してローソンと共同運営する。2万店を突破した1強のセブンをファミリーマートとローソンが追走するというのが、大きな流れだ。
「ブランド力をまとめたほうがコスト的にもメリットが大きいので、合従連衡は自然の流れだったのでしょう。消費者の動向を考えると、コンビニ離れは考えにくい。売るモノがなくなるよりも、売るヒトがいなくなることが問題でしょう」(同)
膨張を続けるコンビニ業界だが、これからは負の側面も浮き彫りになってくるのかもしれない。
(文=長井雄一朗/ライター)