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しかし、3.3%には社員の自己研鑽への補助金や期間従業員の家族手当も含まれており、政権に配慮する姿勢が透けて見える。それでもベア額を示さなかったことで、グループ会社や業界他社が賃上げ額をトヨタをベースにしないようにするとともに、来年以降の春闘で、政府が賃上げの数値目標を示さないようにけん制したと見られる。
決着も異例だった。トヨタが決着したのは集中回答日の前日だった。この影響で、デンソー、豊田自動織機、アイシン精機のグループ3社がトヨタ本体より先に決着する事態になった。トヨタが春闘の相場形成をリードする役割から脱却するため、あえて決着を集中回答日の直前にまでずらして、中小などのグループや業界他社が足並みを揃えないようにしたと見られている。
労使交渉のあり方に一石
トヨタの思惑どおり、自動車各社の春闘は横並びが崩れた。ベアはトヨタが1300円超とし、ホンダは前年より100円高い1700円で妥結した。日産自動車は満額回答の3000円で前年より1500円高く、日産グループの三菱自動車は前年実績より500円高い1500円だった。スズキは900円アップの2400円だった一方で、ダイハツ工業は1500円と前年と同じと横並びは崩れた。
トヨタの今期(2018年3月期)の業績は為替差益や、米国のトランプ政権の減税効果もあって過去最高益となる見通し。ただ、安倍政権の要請に応えて賃上げをトヨタが受け入れると、それが大きな流れになり、日本企業の国際競争力を失うことになりかねない。
一方で、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置を打ち出すなど、保護主義を掲げるトランプ政権が今後、日本車を標的にする可能性もあることから、トヨタとしても頼りの安倍政権をムゲにすることもできない。このため、トヨタ本体として政権の期待には応えつつ、賃金水準の相場形成の主導役から降板する道を探っている。来年以降、労使交渉のあり方が変化するのか注目される。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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