学生側にとってはメリットが大きい制度
まず、大学1年生採用制度における、就活生のメリットとデメリットは何か。
「就活生にとって最大のメリットは、大学1年という早い時期からチャンスがあることです。どんな業界に進みたいかといった卒業後の進路が明確になっている学生にしてみれば、かなり魅力的な話でしょう。さらに学生は、1年生から選考に参加することで面接を含めた就活の練習ができますし、うまく内定を勝ち取ることができれば無料で研修を受けられ、社会人として必要なスキルを一足早く習得することができるのです。
反対にデメリットは、企業側がどこまで人材教育をするかによって若干変わってきますが、学業に支障を来す可能性があるという点。学生に人材教育をするとなると、おそらく最初はアルバイトとして入ってもらうことになり、そのアルバイト業務が終わってから研修をするといったかたちになるでしょう。ということは、通常のアルバイト以上に拘束時間が長くなりますので、多少なりとも学業に支障が出ます。場合によっては、単位を落としてしまう危険性もあります」(石渡氏)
就活生へのデメリットを考えると、大学側としても歓迎できない制度のように思える。
「大学側からすれば不愉快でしょう。人材教育をする分、大学の勉強の時間が削がれるわけですからね。学業が二の次、三の次になってしまう可能性があるのは明白で、糾弾したい気持ちもあるでしょう」(同)
本制度を利用する場合、本来大学の学業にあてるべき時間を早いうちから就活にあてることになってしまう。確かにそれでは本末転倒だろう。
企業側からすると、実はかなりハイリスク
では、本制度を導入している企業の狙いは一体なんなのだろうか。
「企業の狙いは大きく2点あります。まず就活対象を1年生に引き下げることで早めに人材を確保できるという点と、時間をかけて人材教育を行えるという点があるでしょう。一般的な新卒採用のように卒業後に短期間で内定者研修を行うよりは、毎日ではないにしろ、まとまった長い研修期間を設けることができるため、卒業後に即戦力として期待できるということなのです。言わずもがな、これは導入するにあたって企業のメリットでもあります」(同)
一般的な採用制度であれば、数週間や1カ月程度の期間しか設けられない内定者研修が、大学1年生採用制度となると数カ月間などのまとまった期間をあてることができるのだ。企業にとって即戦力は魅力的なのだろう。