金融庁の「金融仲介の改善に向けた検討会議」(座長は村本孜・成城大名誉教授)が暴走した。
傘下に長崎県内2位の親和銀行を抱える、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)と、長崎県でトップの十八銀行の合併に対して、公正取引委員会が難色を示していることに業を煮やし、「金融庁と公正取引委員会が連携する新たな統合審査の枠組みが必要」との提言を行った。
いわば、「金融庁が銀行の合併を審査しろ」という暴論である。つまり、自動車メーカーの合併を経済産業省が、電力会社同士の合併を資源エネルギー庁に審査しろといっているのと同じだ。
金融庁に合併を審査する権限を与えたら、まず「合併しないと経営が成り立ちませんよ」と、標的にしている金融機関の頭取を追い込んで、金融庁が良い“婿”と考えている銀行へ強引に嫁入りさせることができるようになる。
2008年度以降の10年間に公表された地方銀行の経営統合計画は計16件。ふくおかFGと十八銀行のケースを除くすべての計画が認められている。公取委の山田昭典事務総長は4月11日の定例会見で、ふくおかFGと十八銀行の統合計画について「競争を制限することになるのか、きちんと判断していく」と述べた。
公取委は「審査は世界各国と共通の考え方で実施している」としており、「長崎のケースについては、統合後の高いシェアに対する懸念を当初から抱いている」と説明した。
「金融仲介の改善に向けた検討会議」の提言は、「競争当局(公取委)が従来の枠組みで経営統合を判断するならば、地域金融インフラや金融仲介の負の影響が懸念される」と公取委を強く牽制する表現が並ぶ異例の内容となっている。
2016年6月24日現在、有識者会議のメンバーは次の通り。小城武彦氏(日本人材機構代表取締役)、佐藤明夫氏(弁護士)、多胡秀人氏(一般社団法人地域の魅力研究所代表理事)、利根忠博氏(一般社団法人埼玉県法人会連合会会長)、冨山和彦氏(経営共創基盤代表取締役CEO)、増田寛也氏(東京大学公共政策大学院客員教授)、村本孜氏(成城大学名誉教授)、家森信善氏(神戸大学経済経営研究所教授)である。