住宅業界のホットな話題は、積水ハウスの“お家騒動”だった。
積水ハウスは昨年、東京・五反田のマンション用地に絡む詐欺被害で55億円の特別損失を計上した。経営責任をめぐり、和田勇会長と阿部俊則社長(いずれも当時)が対立。今年1月24日の取締役会で、双方が相手の解職動議を提出した末、和田氏が辞任に追い込まれた。
阿部会長、稲垣士郎副会長(前副社長)、仲井嘉浩社長(前取締役常務執行役員)の新体制で再出発した。
株主総会を前に議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)と米グラスルイスは、事件の調査報告書の情報開示が不透明なことを理由に、阿部氏と稲垣氏の選任に反対を推奨した。
社外監査役と取締役がまとめた「地面師による詐欺事件の調査報告書」の全文は公表されていない。概要は公表したが、もっとも重要な“責任問題”には触れなかった。社外取締役からは、「都合の良いところだけをまとめている。全文を公表すべきだ」と批判の声が挙がった。
積水ハウスが4月26日の株主総会で決議した取締役選任議案では、阿部氏選任の賛成率は69.09%と極端に低かった。稲垣氏の賛成率も73.44%で、仲井氏の賛成率95.14%に比べてかなり低い。役員賞与支給議案の賛成率も61.30%にとどまった。
一方、お家騒動にもかかわらず、積水ハウスの業績は好調だ。2018年1月期の連結決算の純利益は前期比9.3%増の1332億円となり、5期連続で最高益を更新した。昨年3月、533億円で買収した米国の住宅会社、ウッドサイドホームズカンパニーの収益を取り込み、マンション用地の詐欺被害による55億円の特別損失を補った。売上高は同6.5%増の2兆1593億円、営業利益は6.2%増の1995億円で、いずれも過去最高だった。